吉川→ドラゴン 第二信(往)ブローティガンと無人島

マスク吉川 やぁドラゴン。元気でやってる?ってやってないそうじゃない。
 なんかワズラワセによると扁桃腺を患ったんだって?あちゃあ。うちの弟も最近扁桃腺を痛めて、熱は出るわ喉は痛いわ、喋れないわ食べれないわで大変そうでした。ぼくは扁桃腺炎はやったことがないので想像の範囲を超えないけど、たぶんどえらく辛かったんだろうと思います。アントニオ猪木がいつも「元気があれば何でもできる!」というけどありゃ本当なんだよね。あの人が言うから「マッチョ的気合い論」に聞こえるけど、本当に元気がないと何にもできない。うちのおばあちゃんもお年玉をくれるときに、のし袋に「健康一番、その次努力」と書いてありました。どこも悪くない状態というのがどれだけ素晴らしいことか。ささくれが取れただけでバランス狂うもんね。前回の便りでは花粉症も大変そうだったし。とにかくお互いからだは大事にしようじゃないか。すべてはそこからだ。

ギネス さてさてさっそくビール話(いまはまだ辛いか?)。
 ギネスビールはうまいね。昔はモコモコしていてあまり好きじゃなかったのだけれど、最近よく飲むようになったよ。そうそう、パブといえばむかし渋谷のパルコブックセンターのフロアにある「ベルギー・パブ」みたいなところで、よくひとりでベルギービールを飲んでいたよ。本を買ってね。飲む、みたいな。気取ってるだけなんだよね。「俺はひとりで本を読んで、パブに入ってビール飲んでるんだぞ」と誰に見せるでもなくアピールしてんの。んでまた高いんだ。1杯900円とかするの。ついでにベルギービールは度数が高いから酔っ払ってきちゃって、本の内容とか全然わからないの。ぼくはそういった「ひとり見せつけ」をよくやっていました。「俺は出来るんだ」みたいなね。またそれを自分に見せて悦に入ってるんだ。自分のがんばりを自分で俯瞰してみるっていうかさ。それを「美意識」というんだろうか。いま考えると、恥ずかしいね。
 でもドラゴンが言うアイリッシュ・バーはぜひ行ってみたいな。外国のビールはとにかくうまいね。穀物まるだしのとんでもないやつもあるけど、当たりに出会うとうれしいものです。

 あとぼくがブローティガンを読んだあとにカーヴァーを読みたくなった理由がわかりました。師匠ありがとう。やっぱり地続きだったんだな。ぼくはふたりとも好きだなぁ。なんかわからないけど「おかしい」んだよね。ありふれているようなんだけどなんか「へーん」な世界が広がっていて、うんうん頷いたり首を傾げたり、愛のあるリアクションをしたくなるようなおかしさがあります。本を一旦閉じて深く息を吸って、宙を見上げ、また読み返したくなる。そんなおふたりです。

 あと無人島に持っていきたい5冊ねぇ。うーん。無人島かぁ。これでもかっていうくらい暇なんだろうな。うーん。こりゃ考えるねぇ。


 (30分考慮)


 よし。
無人島に持って行きたい5冊  まず「太宰治全集10」。ちくま書房の文庫版。10がいいんです。太宰のエッセイ集なんだけど、厚いし、熱いし、これ。
 2、村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」。中央公論から出ているハード版。これはただ単に好きなんだ。短編集だけど何度も読めるので持っていきます。
 3、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」。講談社文庫。クソ長いからいくらでも暇がつぶれそう。
 4、「ポケット詩集」。童話屋から出ているポケット版。ギンズバーグとかケルアックとかのビート詩人たちの本もいいけど、無人島ならばさびしいから日本人の詩集を持っていきます。茨木のり子の詩がいい。
 5、「佐野元春語録」。最後に元春語録を1冊。「ぼくの肩書き?佐野元春さ」が好きなんだよね。あと「うまくやれ。でもうまくやりすぎるな」とかね。以外といいこと書いてあるんだ 。

 でも無人島にはなによりギター持っていきたいなぁ。ウクレレでもいい。楽器が欲しい。楽器を女性に見立てて添い寝したりもできるしね。ほれほれ、とか突付いたりもできるし。ちょっとは淋しさがまぎれるかもしれないよ。

 あとこの前はライブを見に来てくれたみたいで、どうもありがとう。すごい人だったね。舞台の上からドラゴンを探したけど、全然わかんなかったや。ドラゴンはでかいから見つかるかと思ったけど、だめだった。今度は「よーしかわー!」と手を振って下さい。「いまコント中だー」って応えるからさ。

 あと最後に、ドラゴンは禁煙に成功したけど、どうやってやったかやり方を教えてください。

 それじゃあ、また。早く飲めるからだになりますように。
 おやすみストレンジャー。

ダーリンハニー 吉川正洋