吉川→ドラゴン 第三信(往)吾輩は喫煙者である

 やぁドラゴン。元気でやっていますか?ぼくは合同ライブの稽古の真っ最中です。稽古といっても意外と地味なもんで、毎日稽古場に通い「あーしよう、こーしよう」とみんなでただただ唸るというのがほとんどで、バンテリンのCMみたいに誰かが倒れるみたいなアクシデントはほとんどありません。地下の稽古場でただじっと考えまくる、という毎日です。

 さてさて、一服の清涼剤、往復書簡。
 こうやって返事を書くのもだんだんと板についてきました。

 前回の便りは、「ドラゴン扁桃腺炎になるの巻」だったね。いかに扁桃腺炎がきついかよくわかったよ。扁桃腺炎は意外と耳が痛いんだという話に「へぇそうなんだ」とうなずき、しゃべれないことに対する苦痛に「たいへんだ」とおののき、春の耳鼻科の混雑ぶりに「そうだそうだ」と共感しました。本当に春の耳鼻科って混んでるよねぇ。ぼくも鼻が悪いのでときどき行くんだけど、(そこが大人気の耳鼻科ということもあり)平気で2時間とか待たされるの。暇つぶしに本棚にあるクロスワードパズルとかをやろうとしても全部答えが書いてあるし、女性週刊誌とかを見てもさとう珠緒がかわいそうだし、たいてい絵本とか読んで待ってるんだけど、そのうち飽きてきちゃって「外行ってきます」と耳鼻科を出ちゃいます。戻ってきてようやく診察という頃にはもうどこが悪いのかわからなくなってきちゃって、「は、はなが、出ます」と小ニレベルの訴えでいまいちどこが悪いのか伝えきれず、とりあえず鼻をこじ開けられ(恥ずかしい)、変な空気を入れられ(痛恥ずかしい)、辛い液を塗られ(痛気持ちいい)、はいおしまいです。
 病院って半分SMみたいだね。待たされプレイ、じらされプレイ、自分の番プレイ、診察プレイ、こじ開けプレイ、塗られプレイ。熱かなんかあると、そこに「だるいプレイ」、「悪寒プレイ」、「体温計プレイ」なんかがプラスされるからね。
 扁桃腺炎はさまざまなプレイが行われたと思います。お察しします(そんな余裕ないか)。

 まぁでも全快してなにより。お互い「蓄積疲労」には気をつけましょう。

ペットボトルから飲み物を飲む吉川 さて、前回の便りの中に「親の世代がペットボトルから直接飲み物を飲んだりしているのを見ると、ものすごい違和感がありませんか?」という問いがありましたが、なんだかよくわかる気がします。うちの親もたまーにペットボトルから直接飲んでるけど、なんかちょっと嫌です。なんだろうね、あの感じは。ほとんどグラスに移して飲んでるけどね。たまに直で飲んでいるのをみると、ちょっとした違和感を感じます。やっぱり変に「若者っぽい」からかね。あわせるなよ、みたいな。
 それとも「実家」ならではの見えないルールかね。むかしは麦茶をグラスに注いで飲んでたもんね。ひとつをみんなで分けてた。でもペットボトルを直で飲むという行為はとても個人的。口をつけちゃったら所有権はその人のもの。そこでディスコミュニケーションの状態になる。コミュニケーションの断絶。進み行く個人化。その断絶と個人化が、おばあちゃんの家とかに行くと、ちょっとせつないんじゃないかな。みんなの分のお茶を作るとか、注ぐとかってひとつのコミュニケーションだもんね。おばあちゃんの家に行くのもひとつのコミュニケーションだ。そんな中での断絶に、違和感を感じたんじゃないでしょうか。
 でも親の世代にやってほしくないことってあるよね。赤いバンダナ巻くとか。路上にツバを吐くとか。コンビニの前でたむろするとか。破けたGパン履くのも嫌だね。せつなくなるね。「ペットボトル直飲み」もやっぱり答えは「若者っぽいから」からかなぁ。
 いや!もしかしたら、ペットボトルを飲むのが下手だから、という説もあるよ。あれ実はけっこうコツがいるでしょ。ぼくもときどき角度付けすぎて勢い余ってどばーって前にこぼすもん。服濡れちゃって、叩いて拭くもん。でもビビって口をすぼめて飲むとカッコ悪いしね。出来ればキムタクみたいに勢いよく飲みたい。
 ペットボトル独特の「様になる飲み方」ってあるよね。それが出来ていないから違和感があるという説も、提唱しておきます。なんか憲法の解釈みたいな感じになってきちゃったけど。親がペットボトル飲んだだけで「若者説」「実家説」「飲み方説」と、これだけ説が出てくるんだから、憲法9条とかイラク派遣とか大変だよな、といま思いました。

煙草に火をつける吉川 あと、前回のドラゴンの禁煙話はためになったよ。
「吸わないんじゃない、買わないんだ!」っていうのがいかにもドラゴンらしいね。禁煙中じゃなくて、不買中なんだね。でもたしかにそうだ。買わなきゃ吸えないもの。買わなきゃいいんだよね。
 ぼくがなんで禁煙話を振ったかというと、ドラゴンと似たような状況があって、風呂上りの夜中、吸いたいときにたまたま煙草がなかったんだよね。髪濡れてるし、買いにいくの面倒だし、なんだかばかばかしくなってきて、「やめちまえよ」と思ったからなんです。これは喉へのことやお金のことなど積もり積もっての話なんだけど、ぼくもドラゴンと同じくストック派じゃないので、ときどきそういう状況と遭遇して、いらいらしてくるわけですよ。煙草なんかに縛られている自分に。「煙草切れ」でいらいらする自分にいらいらしてきて(情けない気がしてきて)、「やめられるもんならやめたいな」と思って相談してみたんです。どうやってやめたのかなと思って。

 でもさぁ!お笑いやってるとネタ合わせとか舞台とか緊張とか興奮とかで、煙草があると全然違うんだよね。頭の切りかえに煙草がもってこいなんだよね。ついつい吸っちゃう。またネタのあとの一服なんかうまくてうまくて仕方がないの。煙草やめるならお笑いやめるしかないかもしれない。でも本気でやめようと決心したときは、ドラゴンのアドバイスを参考にさせてもらいます。どうもありがとう。

ラッキーストライクメンソールと生黒 あとドラゴンは最近ウイスキー飲んでるの?夢にシーバス・リーガルが出てきてそれがおいしかったから飲んでるって、妙におもしろいなぁ。なんでシーバス・リーガルなんだろう。何のメタファーなんだろう。それも夢の方がうまかっただなんて。夢の中の味覚をよく覚えているね。相当印象の強い夢だったんだ。
 ぼくはウイスキーはめっぽうだめです。良さがまだ全然わからない。ウイスキーは40代になったら飲めばいいか、って思っているよ。20代はビール。30代はワイン。40代はウイスキー。50代からは日本酒。いまはやっぱりビールだなぁ。やっぱ黒生だなぁ。

猫のマルちゃん それでは、また。
 最後にうちの猫の写真を載せておきます。姉妹のひとり、マルちゃんです。最近稽古場に行くときに「吾輩は猫である」を読んでいるので、猫に対して妙な親近感と警戒感を抱いています。


 「元来人間というものは自己の力量に慢じてみんな増長している。少しは人間よりも強いものが出てきて、いじめてやらなくてはこの先どこまで増長するかわからない」。

 猫の言う通りだね。
 ドラゴンのところの猫は元気かな?

 おやすみストレンジャー。

ダーリンハニー 吉川正洋