ダーリンハニー吉川「鉄道は私のものではない」

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ドラマを見ていると、非常に渋い脇役の方々がいます。

もしかしたらドラマというのは脇役で成り立っているのではないかというくらい、味がある方々。もちろん主役あっての脇役とはいえ、たまに脇役が主導権を 握ったり、脇役が主役の回があったりするともうドキドキ。最近では昼の再放送で見た『ハケンの品格』での小松政夫さんの輝いた脇役っぷりがたまらなく、小 松さんがメインの回は涙が出そうになりました。もともと私は小松さんの大ファンですが、ドラマでの痛快な名脇役っぷりを見ていると「ヨッ!親分!」とテレビの前で一声掛けたくなります。

さてドラマや映画で名脇役がいるように、鉄道の世界にもたくさんの名脇役がいます。

主役と言えば駅であり、車輌であり、線路であり、運転手さんや駅員さんであり、乗客もまた鉄道の中ではたいへんな主役でしょう。

しかしあまり目立たないものの、よく見るととてもいい味を出している鉄道の名脇役たちはたくさんいらっしゃいます。今回はそんな鉄道・名バイプレーヤーにスポットを当ててみることにしましょう。まずは



名脇役その1・幌(ホロ)


連結部分のカバーとして活躍する夢の懸け橋、ホロ。このじゃばらスタイル。新型の新幹線などではもっと近未来的なホロもありますが、わたしはこの通勤型などでよく見るじゃばら型のホロが大好きです。アコーディオンのようなフォルム。なんともいえぬゴムの手触り。カーブでのうねっとした変形。風雨に耐えるタフさ。渋みと貫禄があります。

少し前に台湾に行きましたが、台湾にはホロがない列車がありました。車輌間を渡るときにものすごい風を受けました。ホロ慣れしている私には新鮮でしたが、結構おっかなかったです。外国もののアクション映 画などでは連結部分で敵と攻防するシーンが外から撮られていますが、日本の車輌にはほとんどホロが付いているので無理でしょうね。いくら攻防をしていても 外から見たらホロで見えません。特に通勤型などでは車輌間の往来が激しく、ホロなしではやっていけません。ナイス・ホロ。自分からは目立とうとしないけれ どきっちりと存在感を出す。まさに鉄道界の大杉漣さんと言って差し支えないでしょう。



東急池上線の大杉漣を触る筆者



続いての名脇役


その2、アクション


今やあまり見なくなった扇風機。冷房は付いていて当たり前。しかし私が小さいころは「冷房化70パーセント達成!」など自社広告のところに書いてあった気 がします。まだ全面的に冷房は装備されていなくて、扇風機が人を冷やしていたのですね。しかし現在では弱冷房車まで登場。火災報知器の高松くんは「デブに とって弱冷房車は厳しい。強冷房車が欲しい」と言っていましたが、いつか強めとか微弱とかドライなどバリエーションが出てくるかもしれません。しかしそん な時代でもひっそりとまだ扇風機は僅かながら残っています。たまに動いているのを見るとささやかに「がんばれ!」と応援したくなります。いったいどれだけ の人の汗を乾かしてきたのでしょう。あなたの功績は忘れません。これはもう寅さんに出てくる御前様、笠智衆さん並みの名脇役といって差し支えないでしょ う。



こちら京急の御前様



続いては



名脇役その3、方向幕


種別や行き先を示す方向幕。いまや光る電光掲示(LED)にだいぶ活躍の場を譲っていますが、このアナログ式の方向幕もまだまだがんばっています。私はよ く終点などで方向幕がクルクルしているところを眺めて「えっ?そんな行き先あるの?」と驚きながら、「いいの見ちゃった」と思わず手を口に当ててしまいま す。

さてこの方向幕、鉄道フェスティバルや物品即売会では主役級の扱い。LED化が進んでいく中で貴重さを増す一方です。



鉄道フェスの隠れた主役



阪急の方向幕



珍しいバスの方向幕(全部伸ばすと30m以上)



大荷物


この方向幕、一本安くて3000円くらい。高いとウン万円以上の世界。「ただの幕じゃん」というなかれ。行き先がいくつも書かれた幕を見ると、すごくロマ ンティックな気持ちになってきます。また行き先だけではなく、「回送」、「臨時」、「団体」、「試運転」という表示もそそられるんですよねぇ。

普段は静かに佇んでいて、きっちりと行き先を示してくれる。たまに主役を食うくらいの怪演を見せてくれる方向幕。まさに鉄道界の阿部サダヲさんといっても過言ではないでしょう。

さて最後は



名脇役その4・車止め


終点でよく見られる車止め。「もうこれ以上はいけないよ」と限界を示すマーク。終点特有の減速と、『シュー』という大きなブレーキ音。あふれかえる人。い つもそこにはこの車止めがあります。なぜか私はこの車止めに心惹かれてきました。子供のころはプラレールの車止めが欲しくて欲しくてたまりませんでした。 これを最後に配置するのとしないのじゃ締まりが全然違うのです。いないと変だし、いてもらわないと困る。まさに脇役の鏡です。

たまに地方路線に乗りに行くと「本当はもっと先まで行ってたが、ここでお終いと言うことになった」とでも言いたげな車止めがあります。なんとなく先がありそうなのに、線路はそこでお終い。路線の縮小、あるいは計画の未完成。多少の悲しみとミステリアス。

物語の終わりを告げる車止め。何かあったときに受け止める大きさ。そしてちょっとした謎。まさに鉄道界の岸部一徳さんといって間違いないでしょう。



車止めと岸部一徳ふうの人


よく見ると他にもたくさん名脇役はいらっしゃいます。
パンタグラフ、信号、合図灯、モニター、キロポスト、線路のジャリ…。
毎日の名脇役の仕事のおかげで今日も私は鉄道に乗れるわけです。
ありがとう!がんばれ、鉄道の名脇役たち!





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