ダーリンハニー吉川「鉄道は私のものではない」

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 自分の苗字の駅に行ってみたい-。

 これはきっと鉄道ファンならば一度は思うこと。いえいえ鉄道ファンに限らず、自分の苗字の駅があるならば行ってみたいと思う方はきっといるはず。たぶんいる。それも案外たくさんいる。と、信じて話を進めていきます。

 もちろん苗字が駅名になっていない方もいらっしゃると思いますが、駅名というのは古くからの地名がそのまま付いたり、営業上の関係で付いたり、はたまた どうしてついたの?という奇想天外な発想などいろいろな要素が絡み合って付く場合が多いので、たとえ苗字が駅名になかろうと悲観することはまったくありま せん。私はたまたま吉川という苗字で、たまたま吉川駅があっただけの話です。また吉川という苗字はかなりありふれており、本当は芸人として「武者小路」  くらいインパクトがあるほうがいいのですが、本名の吉川正洋で活動して8年。いまさら変えるのも面倒なので吉川のままでいきたいと思います。

 小さい頃から気になっていた吉川駅探訪。
 苗字めぐりの小旅行。
 はじまります。

 ヨシカワと名の付く駅は全国になんと6箇所あります。『吉川』(埼玉県)、『有馬吉川』(長崎県)、『峰吉川』(秋田県)、『良川』(石川県)、『葭川 公園』(千葉県)、『よしかわ』(高知県)の6つ。高知県のよしかわ駅は行ったことがありますが、私が小さい頃から気になっていたのは埼玉県の吉川駅。私の苗字、吉川そのまま。漢字でずばり「吉川」。



路線図で見る吉川駅


 埼玉県の吉川と私の吉川との間に密接な関係はあるのか、そもそも私はなぜ「吉川」という苗字なのか、いろいろと検証する点はありますが、それをやり始めると軽く5年くらい掛かりそうなので、地名と私との関係性は置き去りにして渋谷から埼京線に乗りました。「考えるな、感じろ」とブルース・リー氏もおっしゃっています。吉川を感じたいとの一心で埼京線に揺られます。約30分で武蔵浦和に到着。ここで武蔵野線に乗り換えます。

 久々に乗った武蔵野線。
 日曜日。かなりの混雑。のわりに10分間隔とのんびり。



武蔵野線に乗る


   この武蔵野線は歴史がとてもおもしろく、元はといえば貨物専用線。それを旅客と併用することになり今に至ります。貨物は今でも現役で、たくさんの貨物車 両とすれ違うことができる楽しい路線。貨物専用に作られた為か踏切はひとつもなく、ほとんどが高架の上をひた走ります。西東京の府中本町を出て埼玉県をど ばーっと横断し、最後は千葉県の西船橋に至るというものの見事な半円型。都心から放射状に飛び出た路線をアーチ型に受け止め、それを横に流していくという非常に貴重な路線です。

 武蔵浦和から約20分すると、「次はー、吉川ー吉川です」というアナウンス。
 なんだかちょっと照れます。

 電車がブレーキを掛け、吉川駅が見えてきました。
 駅の手前には川。看板には中川と書いてあります。
 列車がゆっくりと止まる。

 吉川、ついに吉川と対面。

 やっぱりなんだかちょっと照れます。



吉川と吉川



吉川に抱きつく吉川


 ついに着いた。やっと来ることができた。東京に住んでいる私にとって近くて遠い場所だったぜ埼玉県の吉川。うれしいな。なにか名物でもないかな。

 駅前をうろついてみます。

 ロータリーに金色に輝くぴっかぴかのモニュメントを発見。

 …なまずだ。



金色に輝く親子なまず


 光っている金色のなまず。なぜ。
 よく見るとマンホールや柱にもなまずが。なぜ。

 吉川となまず。どういう関係なんでしょう。



いたるところになまずが


 吉川はずいぶんとなまずに力を入れているよう。でも町のキャラクターがなまずっていいじゃない。よく見たらかわいいじゃない。私もヒゲがなまずのようにチョイっと生えてくるので、もしかしたら前世はなまずかもしれない。
 そんなことをぶつぶつと呟きながら、モニュメントとは逆にある出口へ。『ラッピーランド』と書いてある観光案内所があったのでとりあえず入ってみました。

 資料があったので読んでみます。
 そこには吉川となまずの関係が書いてありました。

 「稲作をはじめとして、農業が盛んだった吉川。低地だということもあり、川の水を引き込んだ用水路や小川が各所に流れています。そうした水場がさまざまな生物の生息地となり、中でもなまずの姿はいたるところに見かけられました。

 そんななまずたちも、まちが急激に都市化していった昭和40年ごろから、急激にその数が減ってきます。暮らしが便利で豊かになるにつれ、吉川の人たちの心からもなまずが消えていったかのようでした。

 それからまた時が流れ、環境破壊に対する反省が問われ、癒しが求められる時代、かつての吉川の自然が見直されるようになりました。そんな中、古くからこの地で親しまれてきたなまずを、吉川のシンボルにしたまちづくりを進めていこうという気運が高まったのです」

 なるほど。
 吉川の人々は忘れかけていたなまずを取り戻したんだ。

 私も日々の暮らしの中でしばらくなまずのことを忘れていた気がします。



吉川名物、なまずと吉川


 土手でお菓子でも食べようと思い、なまずせんべいを購入。

 「ぼく吉川って言うんですよ」と自慢げに店員さんに話したらばすごく喜んでくれる。 とてもうれしい。

 「なぜこのお店はラッピーランドというんですか?」と聞いてみたらば、「ラッキーとハッピーと混ぜた感じだそうです」とのこと。

 なるほど。ラッキーとハッピー=ラッピー。
 150%明るい言葉です。毎日ラッピーだらけだったらこんなにいいことはありません。

 しかしラッキーもアンラッキーがないと際立たないし、ハッピーもアンハッピーがないと感じられないかもしれない。要は「アンラッピー」もたまには必要なんではないか。

 ラッピーとアンラッピーのことを考えていたら複合的過ぎて訳がわからなくなりましたが、川が見えてきたので一安心。なまずせんべいでも食べよう。



吉川名物なまずせんべいと吉川


 冬の手前。天気がとてもいい。
 対岸には毛の処理を放棄したように、ワイルドに緑が残っている。

 「じゃりじゃり」と鳴るせんべいの音を耳で楽しみながら、吉川というありふれた苗字について考える。古川(ふるかわ)とよく書き間違えられる吉川。 「きっかわ」とたまに読まれる吉川。でもこの吉川にいると、吉川という苗字がとても誇らしい。ドラマの主人公になった気分。芸人としてインパクトが薄かろ うが、少なくとも吉川にいる吉川はとてもフィット感がいい。 でも天気がよくてせんべいがおいしくて、緑が多い川にいれば誰でもさわやかな気分になるのかもしれません。

 もし私の芸名にインパクトをつけるなら、吉川の名物にちなんで、「吉川なまず」というのはどうだろう。ダーリンハニーの吉川なまずです。うん、まぁまぁ いい。はたまた観光案内所にちなんで、「ラッピー吉川」はどうだろう。ダーリンハニーのラッピー吉川です。当然違和感はまだある。でも言い慣れればすんな り馴染んでくるかもしれない。

 ラッピー吉川。
 吉川ラッピー。

 「ががん、ががん」と武蔵野線が鉄橋を渡る。

 吉川で見る武蔵野線は、私の目からはとても輝いて見えました。



鉄橋を渡る武蔵野線


 土手で観光パンフレットを見ていると、永田公園というところに「吉川富士」なる人工の富士山があると書いてあるじゃないですか。

 たしか火災報知器の小林くんが擬似の富士山についてちょうど書いているんじゃなかったっけか。

 吉川富士。
 私にとっては願ってもない勇ましい感じ。
 これは行ってみるしかあるまいと吉川駅からバスに乗ります。
 15分で永田公園に到着。

 あ、あれか。
 けっこうでかい!



案外な高さ



駆け上がる



登頂



吉川を一望


 吉川富士、大満足。

 どうやら人工の富士山のようですが、16mあるそうです。
 子供がソリをして遊んでいます。かなりのスピードが出て楽しそう。
 ここは吉川の隠れた名所です。今度小林くんにも教えてあげよう。

 そろそろお時間。夕暮れ。
 バスでふたたび吉川駅に戻ります。

 バスから見える景色はけっこうのどかで、住居はとても広そう。

 吉川は、吉川の第二のふるさとに決定します。

 「吉川」と印字された切符を買い、再び武蔵野線を待つ。

 なんだか夕陽が切ない。



吉川駅で撮ったEF65・単機回送



駅から見えた夕暮れ



大満足


 ということで私の苗字参りの旅、吉川駅探訪でした。
 町中が吉川だらけで楽しかったです。苗字が駅名になっている方はぜひ訪ねてみてはいかがでしょう。一瞬、自分が主役になったような気になれることを保証いたします。

 ちなみに相棒の長嶋さんは、三重県に「長島」という駅がありますよ。
 ぜひ!





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