鉄道模型。 それはホビーの王様。贅沢な遊び。崇高な趣味。 手に入れることが不可能な鉄道を、小さくてもいいから自分のものに出来る独占感。 私は子供のころNゲージを激しい地団駄の末に買ってもらい、狭い部屋の中を蜘蛛の巣のように張り巡らし家族に大迷惑を掛けたことがあります。バクストでも書いたことがありますが、家中に「キッチン前」や「トイレ前」、「子供部屋入り口」などの駅を作り、小遣いも底をつき、やむなく鉄道模型は卒業したのです。 あれから十数年-。 最近横浜で「ヨコハマ鉄道フェスタ」というフェスがあったので何の気なしに出かけました。 フェスはものすごい熱気に包まれ、鉄道模型に熱中する人々で溢れかえっていました。 す、すげぇ。 最初はその熱気にただただ唖然としていました。 何の気なしにみなとみらいへ ヨコハマ鉄道模型フェスタ2008 ものすごい熱気 入場制限が行われるほどのすごい人。鉄道模型に魅せられた人々が目を輝かせブースやジオラマに人だかりを作っています。 わかる。 すごくわかる。 小さいころ模型に燃えていたころの気持ちが沸々とよみがえってきます。 (小さいころといっても中学過ぎてもやってた) NゲージにHOゲージ。細部まで見事に再現された車両の数々。山間部やお祭りや街並みや夜景などのジオラマ。小気味よい音を立てて駆け抜けていく車両たち。 これを再びはじめたら部屋の収拾が付かなくなるぞという大警告が頭の中で鳴りながらも、所狭しと部屋を車両とレールで埋めたいという願望がむくむくと脳髄を駆け上がります。 手をつけたらやばい。 でもまたやりたい。 強烈な二律背反で身も心も大混乱です。 精巧なジオラマ お祭りの様子 やばい Nゲージよりもサイズの大きいHOゲージの迫力たるや、すさまじいもの。 しかしHOゲージはサイズが大きくて精巧なぶんお値段も張り、1編成20万円などザラ。 またはじめたらどれだけお金がかかるというのだ。 やるなら子供の頃以上に本気でやりたいので、最低100万円はほしいところだ。ジオラマ造って、車両買って、倉庫でも借りて存分にやりたい。 あぁ好きな車両を揃えて思う存分走らせたいなぁ…。 HOもいいなぁ 基本セットからはじめるかなぁ プラレールからはじめるかなぁ そういえば、少し前に遊びに行った鉄道模型店があった。 お店の名は「カシオペア」。あの豪華寝台特急「カシオペア」から取ったものだ。 「カシオペア」は私の鉄友(テツトモ)であるナベさんに紹介してもらい、わざわざ定休日を開けてもらって模型で遊ばせてもらったんだった。また行きたいなぁ。 私はナベさんに模型熱が収まらないことを正直に伝え、カシオペアの店長さんにコンタクトを取っていただいたところ、ふたたび定休日を開けて遊んでいいですよとの返事を頂いたとのこと。バクストの取材を兼ねてもいいですかと伝えたらば快くオーケーしてくれました。 サンキュー、ナベさん! 私は鉄道模型フェスの二日後「カシオペア」へと向かいました。 「カシオペア」は小田急線の柿生という渋い駅にあります。 隣の鶴川という駅に学校があったので個人的に懐かしい駅です。 柿生駅 カシオペア そもそも私とナベさんが仲良くなったのも、鉄道模型がご縁。私がとある鉄道模型店にぷらっと行った際にそこで働いていたなべさんが「吉川さんですか?」 と話しかけてくれて、そこから東急の話で盛り上がり、今はなき鹿島鉄道に乗りに行ったり、京急にふたりで乗りに行ったり、飲み屋で鉄道を語り合ったりして 親交を深めたのです。 さっそく店の中に入ると、丸の内線500形を製作中の宮城店長さん。 こんにちはと挨拶し店内を物色。 このお店のすごいところは本物の小田急線と平行しているというところ。 線路の真横にある模型店というのも珍しいです。 実際の鉄道の音を聞きながら、模型を愉しむ。 こんな贅沢ございません。 4000形だ! ロマンスカー旧塗装だ! 「相変わらず素晴らしいですね!」 「4000と旧塗装のすれ違いなんて珍しいですよ」 なんていう会話をしていると、私の模型熱を察してくれたナベさんが今日のために帽子と運行表を用意してくれているではありませんか! また運転している感じを出すために、ロマンスカーの先頭部分まで用意してくれている! そしてロマンスカーの方向幕のところには『ダーリンハニー』の文字が! す、すごい! 帽子と運行表 ロマンスカーの先頭部分(ダーリンハニーという文字まで!) こりゃたまらんぞ ナベさんが「それ押してみてください」というので下を見ると、なんとそこには駅のホームにある発車ベルが!押したら発車メロディが流れるではないですか! 「今日は休みですからどうぞ楽しんでってくださいね」と店長。 なんという贅沢。 ナベさんありがとう。 店長ありがとう。 模型で繋がる友達の輪。 発車ベルまで 丸の内線を黙々と作る店長 突然ですが、おふたりにインタビュー。 まずはナベさん。 -ナベさん模型歴はどれくらいですか? 「20年です」 -ナベさんいくつでしたっけ? 「23歳です」 -すごい!3歳から模型やってるんですね。 「そうなりますね」 -エリートだなぁ。何をきっかけに模型を始めたんですか? 「それがあんまり覚えていないんですよ。まぁなんでもよかったんでしょうけれども。たまたま鉄道が好きで模型があったからです」 -そこに山があったからみたいだ。そこに模型があったから。 「そうですね」 -よく「なんで鉄道が好きなんですか?」と聞かれるけど困りますよね。本当にそこに鉄道があったからと答えるしかないですよね。家には大体どれくらいの車両があるんですか? 「数えたことはないんですけど、1500両以上はあると思いますよ」 -1500両!? 「いや、もっとあるでしょうねぇ。ちょっと数えていないのでわからないです」 -すごいなぁ。ナベさんは自分でも作るし、発注があればお客さんにも作ってるんですよね。 「まぁサークル活動の範囲ですけれどね。でも売る時に出来がいいと売りたくなくて困るんです。出来ることなら返してほしい!」 -返してはくれないでしょ。 「でも本当に思いますよ。よく模型を作って売れることを『嫁に行く』と言うんです」 -へぇ!手塩に掛けた娘が嫁に行ってしまう感覚ですね。 「えぇ。いつまでも行かないのもたまにいますけど」 -なるほど。ナベさんは鉄道車両はどこが好きですか? 「床下機器ですね。床下にはすべてが詰まってます」 -床下の中でも好きな部位は? 「空気圧縮機かなぁ」 -渋い! 「模型作る時も床下には凝りますね」 -模型の床下ってめちゃくちゃ小さいですよね。本当に何mmかの世界ですよね。でも床下凝るっていいなぁ。では最後に、めちゃくちゃありふれた質問で申し訳ないですが、ナベさんにとって鉄道模型とは? 「やっぱり最高の趣味でしょうね。集める、走らせる、鑑賞する。すべてが詰まってます」 -ありがとうございました! ナベさん ナベさんが作ったジオラマ インタビューする筆者 続いて店長さんにインタビュー。 店長はインタビューを受けながら器用に丸の内線を作っています。 -店長さんはぼくと同い年ですよね。 「そうです。30です」 -ご結婚されているんですよね。なんでも伊豆急のリゾート21を貸しきって結婚式をしたとか。 「えぇ。あれは最高でしたよ。親戚や関係者を乗せて伊豆まで行って駅の中で式を挙げました」 -素晴らしいなぁ。そして最近模型店の店長になったと。 「はい。普通のサラリーマンもやったりしていたんですが、どうしても一度模型店をやってみたくて」 -小さな頃から模型は好きだったんですか? 「好きでしたけどなかなか親に買ってもらえなくて憧れでしたね。大人になったらたくさん買いたいなと思っていました。でも小さい頃にはわからなかったです けど、大人になって模型をやると癒されますよ。あのシャーっていう音がいいんです。友達とたまに運転会やろうかってるときは『いつシャーする?』って言っ てるんですけど」 -シャーするって。猪木みたい。飲んで模型やったりします? 「やりますよ。『飲みシャー』って呼んでますけどね。ただあんまり飲んで模型やってるとぐるぐる回ってるから酔っちゃいますけど」 -ははは!酔いそう。このお店は出来て間もないですけど、どんな店にしたいですか? 「模型が趣味の方には当然きっちりとしたサービスをします。あとはこれから模型を始めたい方とか、カップルの方とか、家族や小さい子が集まるお店にしたい ですね。模型って実は『こうしなきゃいけない』ってことはなにもないんです。本物の鉄道を再現したリアルさを楽しむのもいいですし、単純に走らせて楽しむ のもいいですし、ありえないだろという編成を組んでもいいですし。なにしてもいいんです」 -ぼく小さい頃やってたんですけど、また始めてもいいですか? 「もちろん!出戻りの方って結構多いんですよ。ぜひ吉川さんもやってください。いや、やれ!」 -やる!では最後に、店長にとって鉄道模型とは? 「人生を賭けてもいいものです。それくらい好きですね」 -ありがとうございました! 店長に聞く 塗りながら語る宮城店長 乾かし中の丸の内線 鉄道模型というとどこか求道的なイメージがありますが、お二人とも極めているのにソフト。このカシオペアでは初心者の方にも簡単に「どこからはじめればいいか」「どうやったら楽しいか」を教えてくれるそうです。ぜひ遊びにいってくださいませ。 こっちは鉄道話に花が咲いて外はすっかり夜です。 東急のたまらぬ並び 小田急のたまらぬ並び 夜になってしまった 鉄道模型の静かな誘いは強烈。 小さい頃やっていたからこそ余計に強烈。 おふたりの模型熱注入により、ほぼ無抵抗になった私。 部屋中が模型に埋め尽くされる日も近い!? |
ホビーショップ・カシオペア 〒215-0021 神奈川県川崎市麻生区上麻生5-6-17 若井ビル202 TEL・FAX:044-986-6221 営業時間:平日12時〜20時 営業時間:土休日10時〜20時 営業時間:※月・火曜日定休 営業時間:(月・火曜が祝日の場合は営業) 詳細は公式ホームページをご覧下さいませ。 http://www.geocities.jp/hobbyshopcassiopeia/ |
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