その日は鉄道博物館でとある番組のロケでした。 休館日を貸しきった贅沢なロケでしたが、われわれの出番は午前中に終了。 そのまま縦横無尽に館内を楽しもうかと思いましたがどうやらてっぱく全体を使っているらしく、うろついたら邪魔な雰囲気。それにお金も払っていないのに貸しきり風情で歩き回るのも気が引けるので、空き時間に少しだけ写真を撮って帰ることにしました。 てっぱく ロケの合間に 多少遊ぶ 外は晴れ。 前日まで4℃とか5℃とかしかなかったのに、その日は10℃近い気温。 いい天気です。ロケのあとはなにもなし。午後の時間もたっぷりあります。 ひとり特急、やっちゃうかい。 それは何だと問われれば、単純にひとりで特急に乗ること。 特急なんて豪勢な!と思いますが、特急といえばみんなでワイワイ膝を突き合わせて乗ったほうが楽しい乗り物。基本的にテンションが上がるもの。それをロンリーで乗るとこれがかなり寂しく、反面景色に集中できて病み付きになるのです。 時間もあるし、ひとり特急しよう。 まずは大宮に戻って考えよう。 大宮へ このバクストはたいてい写真を撮ってくれる同行者(もしくは事務所の方)がいて、毎回きっちり撮っていただいているわけですが、たまにはひとりでうろちょろして、セルフタイマーなんかも駆使してお届けするのも臨場感がでていいかもしれません。 さて大宮からは新幹線、各種特急が走っているものの、ここから東京に帰るとすぐに帰れてしまうし、逆に遠くにも行けすぎてしまいます。出来れば町を散歩できて、歩き疲れて、そのぶん特急で飲むビールがおいしいみたいな感じにしたいなぁ。 しばらく腕を組んで考えていると、ピンときました。 そうだ、川越へ行こう。 小江戸と呼ばれる蔵造りの町、川越に行こう。 少し離れた本川越からは西武のレッドアロー号も走っているし、散歩も出来るし、条件はばっちり。 そうとなったら大宮から川越線で川越へGO。 川越行き 荒川を渡る 到着 川越着。 川越近辺には東武も西武もJRも走っていますが、どの路線も微妙に絡み合っておらず、それぞれ多少距離があります。また蔵造りと呼ばれる町並みまでは、JRの川越駅からだとかなりの距離です。 しばらく腕を組んで考えていると、ピンときました。 そうだ、バスに乗ろう。 たいしたことじゃないのにいちいち「そうだ○○しよう」と言われてもうっとうしいですね。 でもとにかくバスに乗ることにしました。JR川越駅からバスに乗って蔵造り方面まで行って、散歩して本川越からレッドアロー号に乗るというルートにしましょう。 ひとり川越バスも、これまた悪くないです。 バス乗り場 バスに乗りました 私はバスもかなり好きです。 東京でも乗りますが、地方のバスとなると景色があまり見慣れていないのでこれまたいい。特等席の一番前に乗れました。ウキウキです。運転手さんのギア チェンジ。町並み。人。流れる生活の図。知らないバス停。最高です。最近買ったエレファントカシマシのニューアルバムを聞きながら、川越の町をバスから見 る。晴れてます。なんだかいいです。 しばらく乗ると西武線の本川越駅を過ぎ、蔵造りの町が現れました。 停車ボタンを押し降ります。 降りたのは私ひとり。 見渡すと年齢層は高め。 まぁ、納得です。この渋い町に若者が平日の昼からどっとたむろしていても困ります。 オダンゴ 蔵作りの街並み 川越名物「時の鐘」 約400年も前に作られたといわれる時の鐘。 ひとりで歩きながら「名前がいいなぁ」とか、「何時に鐘は鳴るんだろう」とか考えてます。知らぬ間にぶつぶつひとり言も言っている気がします。 小2ではじめてひとりで箱根湯本に行って以来、こんなことばかりしている気がします。 どこかに行っちゃそこらをうろついて、ひとり言を言って、淋しくなって帰ってくる。 また行く。帰ってくる。 の繰り返し。 なんなんでしょう。 古い歌に「♪ひとりじゃないって素敵なことね~」という歌詞がありましたが、ひとりも案外悪くないので困ったものです。もちろん友人・家族・その他飲み 会、人といる時の気分の盛り上がりも楽しいですが、ひとりでどこかに行って、いつもとは違う絵を見てぽけーっとするのも素敵なことね。 ひたすら歩きました。蔵造りの町をグルグル。 やがてグルグルし終えると、蔵造りゾーンを後にし、本川越駅まで歩きました。 素敵なことね、セルフタイマー かわごえし、おすい 西武新宿線・本川越駅 前置きが長くなりましたが、これまではいわば序曲。 ひとり特急には多少の散歩が必要なのです。 ここからひとり特急のはじまり。 西武線・レッドアロー号。 関東私鉄では数少ない優等特急のひとつ。 私鉄の特急というのがJRの特急とはまた雰囲気が違っていいです。小田急ロマンスカーしかり。東武スペーシアしかり。京成スカイライナーしかり。名鉄パノラマカーしかり。JRは「JR!」という堂々さがありますが(それはそれでカッコいい)、私鉄はそれぞれ個別の魅力と味があり惹きつけられます。 西武秩父方面は何回も乗ったことがありますが、本川越から乗るのは初。レッドアロー号は秩父方面は「ちちぶ」、本川越方面は「小江戸」という名で走っております。 料金は特急だというのに西武新宿まで890円。これはうれしい! ちなみにいま走っているレッドアロー号は2代目。正式にはニューレッドアローといいます。「鉄火面」という愛称で親しまれた初代レッドアローは現在も富山地方鉄道で元気に活躍しております。少し前に富山で久々に会いましたが、相変わらず凛としていてカッコよかったなぁ…。 西武新宿行き 富山で活躍する初代レッドアロー号 2代目ニューレッドアローに乗る 本川越14:30発。西武新宿には15:13に着いてしまいます。たったの43分。もっと堪能したいところですが、通勤圏の特急なので、この速さは逆に素晴らしいこと。きっとこの特急に乗って通勤している方も多いことでしょう。 またニューレッドアローはシートピッチ(座席の間隔)が非常にゆったりしていることで有名です。前との間隔が広く、ゆったりたっぷりのんびり特急の本髄を味わうことが出来ます。まさに平日の昼下がりにひとり特急をするには極上の特急といえるでしょう。 NEW RED ARROW ゆったり感覚のシート COEDOビールを買い込む 駅前にあったスーパーをうろついていたら「COEDO」というビールが売っていたので買いました。小江戸・川越からCOEDOビールを飲んでひとり特急なんて、行き当たりばったりとはいえナイスプランだと思いました。 14:30、本川越を出発。停車駅は狭山市、所沢、高田馬場、西武新宿。 さっそくビールを開け、窓の外を見ます。 うまい!COEDOビールうまい! 昼の昼から特急に乗ってビールを飲むというこの背徳感! それも2本買っちゃったので、結構酔っ払いそう! 43分なんてあっという間だなぁ。 やっぱ3時間くらい掛かればいいのに。 見る 飲む 住宅地を走る 窓の外を見て、ビールを飲んで、窓の外を見て。 最初はちらほらと工場があったり、大きな公園があったりしますが、所沢を越えると徐々に住宅街が見えてきます。都会へとムードも規模も変容していく感じ が、上り特急の醍醐味です。下り特急は遠くへ遠くへ山や川なんかも見えてきて旅情ムードをかき立ててくれますが、だんだんと都会めいて来る上りの特急もこ れまた魅力的。何だかごちゃごちゃしてくる感じ。節操も無く雑多な感じ。シティに向かって特急は潜り込んでいきます。 多少酔っ払って。 多少眠くなって。 高田馬場の手前では打者の胸元をえぐるようなカーブ。 そこからはJRへ並走をはじめます。 う。もう着いちゃう。 JRと並走 着いちゃう あー、楽しかった ひとり特急。 基本ベースは淋しいですが、とっても楽しいです。 究極の自己中です。ぜひみなさまもお暇な時にやってみてください。 次のひとり特急はどれにしようかな。考えるだけでニンマリです。 西武新宿に着き、JR新宿駅へ歩く。 ふと、「そうだ、大宮に戻ろう」と思いましたが、「それは酔狂だ」と思い直しやめました。 何周する気ですか、お前は。 |
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