子供の頃からずっと気になっていた路線があった。 子供の頃からずっとずっと気になっていた。 子供の頃からずっとずっとずっとずっと…としつこいくらいに気になっていた。 その路線の名は「ユーカリが丘線」という。 |
千葉県佐倉市にあるその路線は、路線図で見るととても不思議な形をしていた。まるでテニスラケットのようで、子供の路線図欲をかき立てるには申し分なかった。路線図によってはたまに「山万」(やままん)とだけ書いてあった。やままん。響きも気になる。調べてみると正式には「山万ユーカリが丘線」ということがわかった。 路線図で見る山万ユーカリが丘線 鉄道図鑑などで見ると、車両もこれまた不思議だった。鉄道ともモノレールとも言える形状。小ぶりな流線型。クリーム&グリーンの配色。惹きつけられた。 最近電話で「ユーカリが丘線が小さい頃からずっと気になっているんですよ…」と私は鉄道友達のナベさんに打ち明けた。多少の告白ムードもこもっていたのかもしれない。するとナベさんは「吉川さんもでしたか」とこれまた小声で言った。 「山万はいつか行ってみたいですよね」 「ならば次のバクストで乗りに行きませんか」 「行きますか」 「行きましょう!」 もうひとりユーカリが丘線に興味を持っている方がいた。これまた鉄道友達のタカオさん(女性)である。タカオさんは本物の鉄道職員でもある。ということで三人で華々しくユーカリが丘線記念日を迎えることとなった。 くもり時々晴れの日に、ワクワクしながら上野に集まった。 ついにこの日が |
京成線に乗り、ユーカリが丘へと向かう。 ちょうどいい時間にスカイライナーがあったので、途中の船橋まで乗ることにした。 成田空港まで乗らないスカイライナーというのもちょっとオツです。 スカイライナー 昼の特急はナイス 船橋からは普通に乗った。住宅地をひたすらに進む。京成津田沼や勝田台を過ぎる。スカイライナーと普通とでは速度やシートが違うので味わいも変わってくる。特急&普通。一度で二度美味しい。普通に乗っているだけなのに、まるでソフトクリーム・ミックスのような味わいだ。 上野から約一時間、ついにユーカリが丘駅に着いた。 テンションはすでにMAXである。 着いた コアラがお出迎え ユーカリが丘というだけあって、この町のイメージキャラクター>は文句なくコアラだ。きっとコアラはユーカリを食べるからだろう。たしかユーカリが丘線にもコアラの絵が描かれていたはずだ。コアラ像を見て「あ、ユーカリが丘に来たんだな」という実感がわいてくる。 そんな私の歓喜を見透かすように、駅前にはその名も「歡び」(よろこび)という名の銅像が建っていた。「歓び」ではなく「歡び」だ。 この銅像は積年の歡びに満ちた私の心模様を全身で表してくれているかのようだった。 歡びの像 うれしいわ! 私もよ! さて、ここからがいよいよ本番である。ずいぶんと前置きが長くなってしまった。 我々は小走りで改札へと向かった。 切符売り場に着き 階段を上がると ユーカリが丘線を発見 ついに対面! 実際に会った車両はすごく小さかった。 ちょっとびっくりした。 先頭車両には「こあら1号」と書いてある。思わずにやけてしまう。仮面ライダー1号の勇ましさとは真逆であるが、「こあら1号」が醸し出すやさしさも捨てがたい。 さっそく乗り込んでみる。シートに座り、発車を待つ。 発車待ち ユーカリが丘線は地元の不動産会社である「山万」が作ったもので、「新交通システム」のはしりである。見た目は鉄道とモノレールの中間のようだが、鉄道事業法では「鉄道」の部類に入る。地元密着型の路線で、利用客のほとんどは住民や学生。 ユーカリが丘からテニスラケット形の路線を一方向に進んで走り、再びユーカリが丘に戻ってくる。一周13分ほどの小さな旅だ。 ベルが鳴る。いよいよ発車。時はきた。 コアラ1号はゆっくりと走り出した。 たまらぬ揺れである。脳髄に、からだに隅々に刻んでおこう。 進行 ユーカリが丘線の駅名は実にそっけない。たまげるほどにそっけない。 ユーカリが丘を出ると、進行順に「地区センター」、「公園」、「女子大」、「中学校」、「井野」と続き、また「公園」に戻ってくる。 しかし実は私はこのそっけない駅名に小さい頃から惹かれていたのだ。路線図の中でユーカリが丘線の駅名はとりわけ異彩を放っていた。極めてシンプルであった。なんて素直な名前なんだろうと逆にときめいた。 その形。ストレートな駅名。 まるで模型の世界に迷い込んだかのようだ。 公園 女子大 中学校 あっという間に1周してしまった。 今回はあてもないシリーズなので、どこかで降りて一区間歩いてみることにしよう。 やはり降りるとしたら公園駅であろう。 公園→女子大の区間を歩いてみることにした。 公園駅 遊園地のようだ 公園というだけあって、公園がある。非常にわかりやすい。 高架線に沿って女子大方面に歩いてみる。住宅地が続く。どこか新百合ヶ丘やあざみ野に似た雰囲気がある。道が広く木が植えられていて、家が大きい。 しばらく歩くと左側に大きな田んぼが見えてきた。 とたんにのどかだ。 道を曲がり田んぼの真ん中まで歩いてみた。 田舎のようにも見えるし、近代的な郊外のようにも見える。 1980年代のようでもあるが、2080年に見えなくもない。 なんだかとてもマジカルな光景だった。 住宅地を歩く 突然の田んぼ ここはどこだ 女子大駅まで歩いた。 女子大というだけあって、女子大がある。とは限らない。 ここがユーカリが丘線の凄いところだ。 なんと女子大駅に、女子大はない。 実は、この駅は開業当初に女子大の誘致を見越して先に女子大という駅名をつけたが、結局女子大は建たなかった。ということで女子大がないのに女子大駅と名乗ることになってしまった。少し前に和洋女子大のセミナーハウスが建ち、少しだけ女子大の雰囲気が出たという不思議な駅だ。ユーカリが丘線は実にトリッキーである。 女子大駅の前ではかえるがゴロゴロと鳴いていた。 きっとほっぺの下の袋みたいなところがゴロゴロ鳴っているんだと思う。 セブンイレブンの奥に女子大駅 コアラに抱きつく どこかでかえるが鳴いていた 何周もしたかったが、日が暮れてきた。 大人だってお家に帰らなければならない。 とにかくユーカリが丘線はたまらない路線であった。 憧れの人に会えた感慨と、会えてしまった達成の悲しみみたいなものがあった。 家が遠いのでなかなか乗りに行くことはできないが、またぜひ節目節目に乗りに行きたいと思う。 楽しかったねぇ お元気で! |
節目といえばユーカリが丘線は今年で二十五周年である。 それを記念して駅名を公募し、「ユーカリが丘駅」以外の駅名は変更になるらしい。 公園や女子大という駅名がなくなるのは少し残念な気がするが、新たなユーカリが丘線もまた楽しみである。6月30日まで募集をしているようなので私もぜひ応募したいと思う。なんと最優秀賞にはオーストラリア旅行がプレゼントされる。これ以上ない素晴らしいプレゼントである。 新しい駅名を考えよう! 家に帰りさっそく駅名を考えた。 できればその土地に合った駅名がベストだと思うが、一回行っただけではまだまだ夢見がちな名前ばかり浮かんでしまう。 一瞬浮かんだのが「元公園」、「元中学校」だが、私の中で即不採用にした。 安直よ! ありがとう憧れのユーカリが丘線。 その日は眠ろうとしても、頭の中をこあら1号がぐるぐると走っていました。 |
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