ダーリンハニー吉川「鉄道は私のものではない」

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梅雨です。

部屋に帰るとじっとりとした湿気。乾かない洗濯物。変な匂い。
天気予報を見ると一週間が全体的にグレー。でもこの六月を乗り越えれば、やがて暑い暑い夏がやってきます。今はその前の「じらし」とも言うべき梅雨の真っ只中です。
昔は壁に引っ付いていたなめくじに塩をかけたり、アスファルトをぴょんぴと駆けていくカエルを追いかけたりしましたが、彼らの姿はほとんど見なくなりました。

どこへ行った、なつかしのカエルよ。

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青ガエル


そうだ、青ガエルに会いたければ渋谷にいるじゃないか。

ハチ公の前に堂々といるじゃないか。梅雨だし青ガエルに会いに行こう。

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渋谷


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ハチ公前に


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青ガエルがいます


「おい、電車ではないか。」「梅雨なのにけっこう晴れているではないか。」という提言もあると思いますが、これは東急の5000系という車両で、見た目もズバリ通称「青ガエル」と呼ばれていたのです。東急5000系には新しい5000系(現役バリバリ)と古い5000系がありますが、こちらは古い方の5000系です。これは私にとっては非常に思い出深い車両で、小さい頃から東急沿線に住んでいたこともあり、この青ガエルにはよく乗りました。

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愛しの青ガエル


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中にも入れます


2006年に渋谷に来て以来、新たな待ち合わせのシンボルとして鎮座している青ガエル。私もよくここで待ち合わせをします。たまにとなりの人の電話に耳をそばだてていると

「遅いよー。緑のやつの前にいるよー」(やつってなんですか)とか、 「緑の電車みたいなのの前ー」(みたい、ではなく立派な電車です)

などと言っている人がいますが、そういう人には「これは東急初代5000系という非常にたくましい名車で、昭和29年に登場以来、東急では86年までがんばって走っていました。そこから更に長野県の上田交通で走って引退したんです。飛行機の構造に似たモノコック構造で、直角カルダン駆動の高速モーター、側柱は手作りですからね。泣けてきちゃいますよね…」と思わず説明をしたくなってしまいます。

しかし説明したところで「え?」とだけ返されるのがオチなのでしません。


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昭和29年


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運転台もそのまま


青ガエルは105両(匹?)製造され、東急線内で活躍し、86年に東急を引退します。その後は地方に譲渡されたり、廃車になったりしますが、5001は保存され塗装も塗り直されて渋谷にやってきました。長さが少しカットされているのが多少残念ではありますが、こうやって渋谷の隠れたシンボルになっているのはなんともうれしいことじゃないですか。

置いてあるだけでさすがに現役はもういないだろう、と思われる方もいるかもしれませんが、この青ガエル、まだ地方でなんと二両だけ走っているのです。

活躍の地は九州の地、熊本です。

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熊本電鉄で活躍中

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つり革は東急百貨店


対面した時は涙しそうになりました。小さい頃乗っていた青ガエルがまだ走っているだなんて。だいぶ退色しているし機器も古いので整備が大変だろうけれど、まだ現役だなんて。うれしい。いまも現役で走る青ガエルを見られるのはここだけです。

小さい頃の夢を乗せて、青ガエルは走ります。

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走る青ガエル


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ありがとう


私がなぜ青ガエルが好きかと言うと、一言で言えば「顔」です。なんていい顔をしているのでしょう。惚れ惚れします。現代ではなかなか作れない顔です。かわいいというかファニーというか、見ていると微笑ましくなります。東急の一時代を気付いた名車に間違いないのですが、どこか名車名車していない雰囲気が愛くるしいのです。そんな親しみやすさもあって、きっと渋谷にも保存されているのでしょう。

この青ガエルには兄弟がいます。

愛称はその名も「銀ガエル」です。

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銀ガエル


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だいぶメカっぽい


こちらの製造は4両だけ。非常にレアです。さすがに現役では走っていませんが、上田交通などに保存されています。銀ガエルは銀ガエルでカッコイイ。個性派俳優のような際立ったフォルム。現代の銀色の車両の魅力とは一味違った味わい。

他にも地方に行ったときに塗装が変わって、赤ガエルになった車両もありました。

しかし5000系を現役で見られるのは熊本のみ。
あぁ。また東急で走らないかしら。と思ったときは頭の中に走らせます。


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熊本にはなかなか行けないので、会いたいときには渋谷に行こう。

夏を待ちながら、今日も青ガエルはたたずんでいます。

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カエル君


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一緒にがんばろうね




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