ダーリンハニー吉川「鉄道は私のものではない」

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先日、関西へロケに行った。
CSテレ朝チャンネルで放送されている『THE急太郎リポート』、第九弾のロケである。

これまで北海道(×2)、東北、北陸、四国、九州(×2)、台湾といろいろな土地のローカル線を旅してきた。今回は満を持しての関西である。

とにかく関西の鉄道はおもしろい。歴史だって古い。私鉄大国とも言われ、JRとの競争も激しい。名車と言われる車両が当たり前のようにバンバン走っている。


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なつかしの103系が普通に走っていました

ロケは4日間。天気もよく充実したロケができた。
最終日も無事終わり、だいたいお昼過ぎに解散となった。

…帰りたくない。

こんな鉄道大国にいるのに、すぐに帰るだなんてもったいなさすぎる。
次の日は仕事だったが、マネージャーさんに「帰りたくない」と相談をしたところ、翌日の朝の便で帰れば何とかなりそうだとのこと。懇願をし、取材ならばとオーケーが出た。

よし、半日だけだけど、関西の鉄道に乗れる!

しかし半日ですべて回れるほど、関西は甘くない。

きっと1週間でも足りないだろう。それくらい大規模な鉄道網である。ここはひとつの路線に絞った方がよさそうだ。

腹は決まっていた。

阪急に乗りたい。


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憧れの阪急

ということでずっと憧れていた阪急にあてもなく乗ってきました。


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阪急のイメージといえば

・なんといってもマルーン(栗色)
・モダン
・高級感と落ち着き
・宝塚歌劇団などを生んだ創立者・小林一三さんの卓越したビジョン
・阪急ブレーブス
・関東で言えばよく東急と比較される

といったところ。
とにかくささやかなこだわりと、お洒落な路線というイメージがある。

阪急にもたくさんの路線があるが、やはりまずは宝塚線に乗ってみたい。


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阪急・宝塚駅

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マルーン!

いま製造される車両は、外見がほとんどが銀色である。
そんな中、伝統的なマルーン(栗色)のみで今も走っている阪急の心意気が嬉しい。

しばらくすると、電車が動き出す。

「私はいま阪急に乗っているぞ!」と誰かに伝えたい。いつも利用している地元の人には?だろうが、鉄道ファンにとって阪急はどこか特別な存在なのだ。

景色を眺めていると、右手に宝塚歌劇場が見えてきた。


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タカラヅカ

…思い出した。

小さい頃、ここ来た。母がタカラヅカのファンで、東京の劇場では飽き足らず本場まで見に来るのを、家族全員で付き合ったんだった。小学生の頃だったと思う。

とたんになつかしいような気持ちになってくる。

すれ違う阪急電車を眺める。
父、私、弟と男三人で、母のタカラヅカ観劇待ちをしたこと思い出す。

行き交う栗色を見ていると、脳の納戸が開いた気がした。


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納戸が開く

宝塚線は梅田に向かって進む。
読むのが難しい駅をいくつか過ぎる。

小さい頃から、なんとなく路線図上で気になっていた駅をあらためて過ぎる。


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めふじんじゃ(売布神社)

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ひばりがおかはなやしき(雲雀丘花屋敷)

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連結部分で将棋をする子供たち

ぼーっと外を眺めていると、お腹が空いてきた。
時計を見れば午後一時をとうに過ぎている。

ここらで昼休憩にしよう。
食べたいのはもちろん駅そばである。

私は宝塚線のちょうど真ん中あたりにある石橋駅で降りてみた。


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阪急そばを発見

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好物の冷やしとろろそばを注文

阪急そばはすごくおいしかった。
惰性じゃない感じの生き生きとしたそばだった。いつもこれが食べられるなんて阪急沿線の方はうらやましい。やはり駅そばはいいなぁ。

石橋駅構内をしばらく歩く。
駅を見渡すとなかなか構造がおもしろい駅である。

小文字の「r」のような不思議な形をしている。


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たまらぬポイント

っと、支線が出ているではないか。

なるほど、阪急箕面(みのお)線と分岐しているから「r構造」なわけだ。
よし、ぷらっと乗ってみよう。


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石橋-箕面を結ぶ箕面線

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わずか4駅のローカル風情

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あっという間に箕面に到着

ここからあてもなくシリーズの醍醐味である、知らない町散歩へと突入。
箕面の町を少し歩いてみよう。

そういえば少し前に読んだ山城新伍さんの本に「箕面で時代劇の撮影をした」と書いてあったのを思い出した。歩いてみると、なるほど古きよき温泉街テイストの町である。

もみじの天ぷらがそこらじゅうで売られている。

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もみじの天ぷら

なんかすごいタワーがあったので上ってみた。
ホテルと直結しているようだが、宿泊者でなくても100円を払えばエレベーターに乗れるようだ。


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すごいタワー


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関西を見渡す

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楽しかったヨー

タワーやもみじの天ぷら以外にも、箕面大滝やいくつかの寺、野猿の生息地、昆虫館など惹かれる観光スポットがいくつもあった。しかしすべて回っていると日が暮れてしまうのでふたたび阪急に乗った。今度はゆっくり温泉に浸かりにこようではないか。

石橋まで戻り、宝塚線に乗り、終点の梅田へと向かった。

写真などで見たことはあったが、想像以上に大きなターミナル駅である。


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ふたたび阪急に乗り

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梅田に着きました

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圧巻のマルーン

マルーンマルーンマルーン。

私はベンチに座り、しばらくその濃い栗色を眺めた。「私はいま、関西にいるぞ」と実感できる時間であった。通天閣や甲子園や道頓堀に行くよりも、私は阪急を眺めているだけでよかった。関東の人間にとって、阪急はやはり憧れの路線である。特に私鉄が好きな私にとって、阪急は特別な存在であった。

まだ乗れる。

私はふたたび阪急に乗り、十三(じゅうそう)に向かった。


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このウッディーな感じ

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先頭から眺める

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じゅうそう

十三駅もまた、複雑な構造をしている。
模型で再現したらたまらないだろう。梅田から十三まで同一方向に走っていた線路がここを境に、それぞれ神戸、宝塚、京都方面へと分岐していく。どこか旅立ちの駅という風情だ。

今日のホテルは十三の隣の駅、南方(みなみかた)のビジネスホテルを取った。新大阪が近いからだ。

夕方が近づいてきた。
南方駅に行こう。

ここを今日のフィニッシュとしよう。


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ありがとう阪急

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南方駅にてフィニッシュ


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今回は宝塚線、箕面線(ちょっと京都線)に乗った。やはり阪急はよかった。なんとも粋な路線で、できればずっとマルーンでいて欲しいと思う。

もちろんその他私鉄、JRもいい。そもそも関西の鉄道自体が素晴らしい。路線が長く、入り組んでいてワクワクする。そしてなんとも地元に根付いているではないか。見ていて乗っていて、それがうれしい。

南方からホテルまで歩いている途中、大阪市営地下鉄の駅があった。


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西中島南方駅

西も南も入っちゃっている有名な駅である。
たまらない。

私は「なんか得した気分」とほくそ笑みながらホテルで時刻表を眺めた。

パラパラめくっていると、ものすごく乗りたい列車を見つけた。

ということで関西の旅、次回へと続きます。





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