ダーリンハニー吉川「鉄道は私のものではない」

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喫茶店によく行く。稽古や待ち合わせ、時間つぶしに暇つぶし。
時間つぶしと暇つぶしはほぼ同じ意味だと思うが、時間を時間と捉えるか暇と捉えるかでは、ニュアンスが少し違う気がする。

「時間とは何か」「暇とは何か」。喫茶店に行くとそんなことを考えたくなってしまう。

しかしこうなってくると鉄道のページなのにジャンルはもう哲学だ。どちらかというとこのページは「鉄学」(てつがく)なので、いろいろなことを考えて、頭が加熱しすぎた時にふと外を見ると電車…みたいな喫茶店があればベストだ。

しかし電車が見える喫茶店はありそうで案外ない。

多くの喫茶店は入りやすいように1階部分にあるし、最近では電車自体も高架上に上がってきている。となると3階、4階部分にある喫茶店ということで条件はかなり厳しい。当然電車と近い部分にないと見えない。レストランはあるけれど、喫茶店に絞るとあまり入った記憶がない。

ということで電車が見える喫茶店はないか、山手線から探してみました。

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まずは車内から


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渋谷から内回りに乗って品川、浜松町、新橋、東京と流す。

「喫茶店だ!」と見つかったらすぐに「ていへんだ」みたいに降りる体勢でいたのだが、なかなか見つからない。このまま1周して帰ってしまう勢いだ。


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ないものですな

山手線という選択自体をいきなり間違ったか。

最初はつり革に掴まり窓と平行に外を見ていたが、知らぬ間に先頭でかぶりついていた。秋の陽光がビルに反射している。多くの人が目的地へと急いでいる。

「吉川、山手線を1周」なんていう企画はダメだろうなと思っているときに、次は秋葉原、秋葉原ですというアナウンスが聞こえた。

なんか一瞬いい感じの高さに喫茶店が見えた気がした。
よし!いっちょ降りてみよう。


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あそこらへんに見えたんですよ

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降りてみた

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これはマック

マックは喫茶店ではない。マックはマックだ。

しかしまずはこのマックでもいいのではないか。どういった角度から、どういった感じで電車が見えるのか検証してみたい。

と思いきや、大きな問題を見つけた。


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ブラインドが閉じている

今日はいい天気だな、なんて呑気に背伸びしていたらブラインドのことをすっかり忘れていた。いくら外に電車が見えていても日差しが眩しかったらブラインド を下げてしまう。私だってみんながみんな「電車が見たい」とは思っていないことくらいわかる。眩しいものは眩しいし、マックはマックだ。

ここはあきらめ、先ほど見えた(気がした)喫茶店へと行ってみよう。


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会社でした

駅からは給仕さんみたいな人が見えた気がしたが、社員の方(もしくは幻惑)だったみたいだ。もしかしたらプレゼンみたいなのをやっていたのかもしれない。

よく考えたら山手線自体がわりと高いところを走っているし、周りはオフィスビルが多い。やはり山手線という選択自体を間違ったか。

なんだかものすごいミッションを頼まれてもいないのに勝手に始めてしまったのではないか。

「…都電荒川線にしておけば良かった」と私は少しの後悔を感じ始めた。


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困りましたな

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とりあえず線路沿いを行きましょう

車内からではなく今度は下から探してみることにしよう。
これならば「ていへんだ」みたいに降りなくていいし、あったらすぐに検証出来る。

喫茶店は駅のそばにあるとは限らない。駅間の短い山手線ならば駅と駅の間にある可能性は充分にある、…と思う。思いたい。


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アメ横に出ちゃいました

秋葉原→御徒町→上野方面へ歩けば、当然アメ横に出る。
この時点で時刻は14時30分。夏のように太陽は待ってくれない。
夜になると撮影は終わりなのでなんとか夕暮れまでに電車が見える喫茶店でお茶をしたい。


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安いよ安いよー

アメ横は雰囲気がやはり破格だ。
平日の昼でも賑わっているし、アジアの商店街っぽい原始的な空気が漂っている。

上野の駅が見えてきてしまった。
また山手線に乗るかここから他の路線に乗ってみるかとぶつぶつ頭の中でひとり言を言っていると

と!


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救いの手・ルノアールを発見!

やった!

なんだか高さもちょうどいい感じだ。これはもしかしたら電車と平行しているかもしれない。

またルノアールというのもいいじゃないか。何せルノアールは私が一番よく行く喫茶店だ。



おもいきや


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地下でした

スーンという気分になった。

「ガクーン」でもなく「はぁ」でもなくスーンだ。


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スーン

完全に上野に着いてしまった。

たしか西郷さんの像がある場所は見晴らしがよくて、電車がよく見えた気がする。
ひとまず休憩も兼ねて行ってみよう。


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見えますよー!

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ここが喫茶店なら

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とりあえずお茶

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西郷どん

「青空喫茶・西郷」と勝手に命名して「ここがぼくにとっての電車が見える喫茶店です」と言えば通じるかもしれない。オツなところを知っているじゃないか吉川、と褒めてもらえるかもしれない。

いや、これでは私のおばあちゃんでも褒めてくれないだろう。

ただの電車が見える場所だ。


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再び山手線に乗りました

鴬谷はラブホテルが多いし、日暮里、西日暮里は料理店が多い…。
こうなったら意地でも山手線内で探したい…。

外はだんだんと暮れなずんでくる。

これでは本当に山手線を1周するだけになってしまう…。

田端に着いた。
ん?いま喫茶店らしきものが見えたような。


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なんか喫茶店っぽい

とりあえず田端で降りてみる。

見渡すとむかし来た田端ではなくなっていた。
これはどうやら駅ビルが完成したらしい。なんとなく駅全体が新しい。

改札を出て中2階のようなところに上がると山手線を見下ろせるスターバックスを発見!


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ココアを飲みながら本を読んで

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電車を見る

ここはどうやらTSUTAYAと繋がっていて、スターバックスで注文をするとTSUTAYA店内の本が読めるシステムらしい。

電車も見えてお茶も出来て本も読めるなんて、ある意味ここはもう天国みたいなところではないか。

ゴール!!

と思ったが、たしか田端には車庫がありその近くにホテルメッツがあった記憶がある。そのホテルメッツからはいろいろな車両の入れ替えが見えたんではなかったか。もしそこに喫茶店でも入っていれば…

辿り辿り行ってみると


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あ、あれは

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喫茶店だ!

嬉しさのあまりものすごい顔になってしまった。

しかしこれぞまさに電車が見える喫茶店だ。


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素晴らしい眺め

まず奥に山手線&京浜東北線が見えて

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上には新幹線が見えて

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下には貨物まで見える

また気持ち悪い顔になってしまった。
私は嬉しいと歯茎がむき出しになってしまう。

ここはまさに電車のオンパレード。
紅茶も美味しい。さすが田端ホテルメッツ。

今度は上階にゆっくり泊まりたいと思う。


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本・紅茶・電車でしばらく鉄学しました


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電車が見える喫茶店は探してみると案外とないものだとわかった。

もしかしたら地方にはいっぱいあるのかもしれないし、山手線チョイスが事態をややこしいことにしてしまったのかもしれない。

でも見つかって本当によかった。普段味わえない極上な時間が過ごせた。

みなさんの町に電車が見える喫茶店があれば今度こっそり教えてください。




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