ダーリンハニー吉川「鉄道は私のものではない」

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先日タモリ倶楽部の収録があった。もちろんタモリ電車クラブの企画だ。来年1月中旬に放送されるようなので、中身はぜひオンエアをお楽しみにしていてください。

この企画のときは空き時間もずっと鉄道の話をしている。今回もタモリさん&土屋礼央さん(RAG FAIR)と楽屋で延々鉄道話をしていた。その時の会話。

土屋さん「東京―品川だけ新幹線に乗ったことあります?」
吉川「え!?ないですね」
タモリさん「何で乗ったの?」
土「どうしてもN700系に乗りたかったので。ものすごいあっという間ですよ」
タ「たしか7分だよね」
吉「7分だけ新幹線ですか?」
土「いやぁどうしてもN700に乗りたかったんですけどそれしか乗れなくて。でも最高でしたね」
タ「でもあれダイヤ見るとのぞみが7分でこだまだと8分なんだよね。あれ不思議だよなぁ」
土「そうなんですよ」
吉「じゃあこだまに乗った方が1分多く乗れるんですね」
タ「でも同一区間で1分の違いはどういうことなんだろう」
土・吉「どうしてなんでしょうね」

1分の差はどうしてだろう、と議論になり、ダイヤを見合った。

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こだまは8分、のぞみは7分

なんででしょうね、と検証している最中に「本番行きます」と声が掛かり、検証は途中で終わってしまった。そのまま最後まで収録は進み、残念ながら東京―品川間の話はそこで終わってしまった。

それにしても土屋礼央さんの情熱は凄まじいものがある。東京―品川だけ新幹線に乗る人なんて聞いたことがない。そしてあの区間の所要時間を「7分だよね」とダイヤを見ずに答えてしまうタモリさんも恐ろしい。



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後日、たまたま田端に用事があった。その足で何となく東京に行った。

次の仕事は大崎である。でもまだ時間があった。
どこかでお茶でもするかいとぼんやり考えていたところ、私の頭の上に電球がぱっとついた。

「あ、東京―品川を新幹線で移動してみよう」

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足が勝手に新幹線へ

0系引退の余波があったのかもしれないし、先日の会話が気になっていたからかもしれない。とにかく私は最近新幹線がまたまた好きである。どこかへビョーンと連れて行ってくれるあの強引さはやはり魅力的だし、旅立ちと高速移動のムードはなかなか日常では味わえない。

しかし今回は旅立ちでもなければ、高速移動でもない。

なにせ東京―品川間はのぞみで7分である。
東海道線でも8分しか掛からない。

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切符を買うのが恥ずかしい

対面式のきっぷ売り場で「東京―品川 大人1枚」という勇気がなかったのでタッチパネルで買うことにした。タッチパネルという機械を開発したメーカーさんに感謝を言いたい。

空席状況を見るとどの列車にも乗れそうだが、どうせ乗るなら多く乗っていたいので、こだまの自由席に乗ることにした。こだまだと8分の乗車だ。この時点で 在来線である東海道線と変わらない。新幹線のアイデンティティを根本的に拒否している気がして、ちょっとした背徳感がある。

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空席案内

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東京―品川、と

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1030円

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乗車券と特急券と小さな背徳感

切符を発売している限り乗る権利があるのだから堂々と乗ればいいと思うのだが、普通の電車でも東京―品川はあっという間である。山手線でもいいし、京浜東北線でもいい。料金もそっちの方が安い。うーん。

よし、この「いけないことをしている感じ」は駅弁でごまかそう!

そうだ。私は今から新幹線に乗るのだ。
移動の最中に駅弁を食べられるなんて、新幹線ならではじゃないか。

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吟味

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購入

駅弁を買うととたんに心楽しくなってきた。

のぞみで行けば7分のところをこだまで8分掛けて移動する。
それも新幹線で。駅弁まで買って。

徐々にウッキウキしてきた。それもこれも駅弁のおかげである。
駅弁パワーはすごい。

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とたんにウッキウキ

新幹線のホームに立つと、サラリーマンの方がたくさんいた。
きっとこれから出張であろう。または東京から会社に戻るのであろう。14時30分の東京駅には硬派な旅立ちのムードが漂っている。

そんな中、ひとりだけ品川へ行くというふざけた野郎がいる。

いや、私はふざけてはいない。

堂々と、品川まで8分のこだまに乗りたいのだ。

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品川に行くぞ

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こだまの到着を待つ

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ホームの下がすごいことになっている

お腹がすいた。
もう昼ごはんの時間はとうに過ぎている。

でもホームで駅弁を食べてしまっては新幹線に乗る意味がない。

ここは我慢。

しばらく入線を待っていると

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きました

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きました

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きました!

700系である。
カモノハシ状のノーズがいかした車両だ。

東京に着いた700系はひとまず乗客を降ろし、車内の清掃作業に入る。

これを待っている間も妙に鼓動が早い。隣駅に行くだけだというのに、新幹線のホームはどうも落ち着かない。普段乗っている方はまったりと扉が開くのを待っている。新幹線のベテランは、やり手っぽくてどこかカッコいい。

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清掃作業に入ります

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待つ男

10分ほど待ったか。

「お待たせいたしました。こだま565号新大阪行き、ドアが開きます」

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乗り込み

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遠くまで行きたい…

さて、8分の乗車である。

できることは限られている。
車窓をゆっくり眺めることも、居眠りも許されない。私は品川で降りるのだ。「起きたら新大阪」なんていうハプニングも愉快ではあるけど、16時には大崎にいなくてはいけない。

できることはただひとつ。

駅弁を食べることだけだ。

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手毬寿司

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動いた

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右手には同タイムの東海道線

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左手には東京モノレールの橋脚

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品川です

え!

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え!

早い!

品川駅で降りる人を想定していないため、アナウンスはない。
気付かなかったらそーっと次の新横浜まで行ってしまいそうだ。

まだ駅弁は半分残っている。食べることに集中しようと思ったが、どうしても車窓を見てしまったり、写真を撮ってしまった。7分と8分の違いなどまったくわからなかった。

動き出しの高揚のまま、品川着。

手毬寿司の酸味と、旅立ちの余韻だけが体内に残る。

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降りなきゃ

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旅の途中で放り投げられたよう

0系新幹線に乗ったときは15分の乗車で短いなと思ったけど、8分となると瞬時だ。

しかしこれもれっきとした移動の方法である。

駅と駅がある限り、移動は出来る。
どう移動するかはその人の選択次第だ。

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ホームで残りを食べました。


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東京―品川を新幹線で移動してみて思ったことはひとつだけ。

「遠くへ行きたくなる」

ということ。

新幹線の魔力はすごい。やはり在来線と違って特別な存在である。


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ふたたび山手線へ

今度はせめて熱海までは行こう。



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