ダーリンハニー吉川「鉄道は私のものではない」

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本屋さんに行くとよく時刻表コーナーに立ち寄る。

新刊、文庫、音楽、鉄道と廻って、時刻表コーナーは最後に寄る。
なぜ最後かというと、持って歩くのに時刻表は重たいからだ。なので一番最後に寄ることにしている。一緒に並んでいる旅特集が組まれた雑誌にも手をのばす。『一個人』、『散歩の達人』、『旅』、『COYOTE』、『ノジュール』あたりをペラペラめくる。『ノジュール』はとても好きな旅雑誌だけれど、売り文句が「50代からの自分ライフを格好よく!」だ。まだ31の私が読んでいいのだろうか、とたまに思う。

そして一通り見終えると、時刻表に手を伸ばす。

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時刻表コーナー

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今月の臨時列車はなんだろう

時刻表はたいていどれも毎月20日に発売される。私はずっとJTB時刻表を買っていたが、最近はよく『文字の大きな時刻表』を買っている。文字通り文字が大きくてとても見やすい。まだ31の私が読んでいいのだろうか、とたまに思う。

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文字の大きな時刻表(交通新聞社)

合わせて『東京時刻表』も買う。
これは東京のダイヤを網羅していてとても気合が入っている。

東京には網の目のように路線があり、列車の本数も多い。
まぁこれだけの数字をよく並べられるものだといつも読みながら感心してしまう。

東京にも、時刻表にも「尊敬してます」と言いたい。

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東京時刻表(交通新聞社)

時刻表を買うと、たいてい喫茶店で一読みだ。

真新しい時刻表はうれしい。 しかし一か月経つとこれが不思議なくらいにボロボロになる。なんでそんなにめくるんだと言われてもよくわからない。

タモリ倶楽部に出演した時に「時刻表なんて読んだことありませんよ」と言ったガナルカナル・タカさんに、タモリさんが「よく生きていけるね」とおっしゃっていたが、私もどちらかと言えばタモリさんと同意見だ。

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なんだか見ちゃいます

さて、ここからは私なりの時刻表の楽しみ方をおすそ分けしたいと思う。

まず時刻表のトップページには日本全国の路線図が乗っている。
分量的には前菜といってもいいが、いきなりメインディッシュの満足感が味わえる。

月ごとに劇的変化するわけではないものの、ここを眺めているだけで一時間は平気で経ってしまう。次に攻めたい地方、架空の路線妄想、珍名探し、難読駅探しをしているうちあっさりと時は過ぎる。

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笑内(おかしない)駅はどこでしょう

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及位(のぞき)駅はどこでしょう

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特牛(こっとい)駅はどこでしょう

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特牛どこだっけ

さて、珍名・難読駅を探してウォーミングアップしたら、次は臨時列車チェックだ。

鉄道ファンにとってこの季節は三月に行われるダイヤ改正の話題で持ちきりだが、臨時列車もかなりアツイ。臨時列車は必ず黄色いページに書いてあり、路線図を眺めた後は必ずここをチェックする。

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かにカニはまかぜ

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勝浦ビッグひな祭り号

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きそスキーチャオ

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快速さわやかウォーキング

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増毛(ましけ)ノロッコ1号・3号

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増毛ノロッコ乗りたいですなぁ

臨時列車はとてもチャーミングな列車名で走っている。
たまに「どこに行くんですか?」と聞きたくなる列車名もあるけれど、どれも愛嬌があっていい。私は臨時列車のネーミングが好きだ。

さてここからはいよいよ本編へと突入する。

おびただしい量の数字がこれでもかと列記してある。
臨時や休日限定などを除いても、これだけの列車が毎日全国を駆け巡っているのだと思うと気が遠くなる。

そんな中でも私は本数が少ない路線をいつも見てしまう。

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たとえば山田線

「まず時刻表の読み方がわからんよ」という方も大勢いらっしゃると思う。

時刻表は上から下に時間が進んでいく。
上の写真の山田線は上が盛岡で、一番下が釜石だ。上りは逆となる。

これを見る限り、盛岡から山田線に乗って釜石へ行くには、11:04発→14:17着の快速リアス、13:51発→17:07着の快速リアス、16:30発→20:44着の普通しかない。

山田線、いつ見てもすごいダイヤだ。
乗りたい。

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只見線(ただみせん)もすごい

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強烈です

東京に住んでいると数分おきにバンバンと電車がやってくるけれど、こういうダイヤを見ると鉄道のありがたみが染みてくる。なにせ会津若松7:37発の次は13:08発である。1本逃すと、5時間以上来ない。

分単位の生き方と、時間単位の生き方、どちらがいいのだろうか。


時刻表を見ているとたまに「空間とは」みたいな難しいことまで考えてしまう。

しかしそんな空間がたくさんあるダイヤと真逆なのがご存じ山手線だ。

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もうなんのこっちゃわからない

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数字の行進

これはこれでえらいことになっている。

ここまで来ると、もうダイヤに載せなくてもいいのではないかと思う。

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…東京


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私は基本的に数字が苦手だ。
数学も嫌いだった。

でも時刻表だけは眺めていて飽きない。

文学小僧の私も、時刻表に載っている数字だけは大好きである。
文系も理系も関係なく楽しませてくれるのが時刻表のすごいところだ。

これだけ細かくて、これだけ壮大な本もなかなかない。
まさに時刻表は鉄道ファンの聖書。夢想を楽しむもよし、下調べするもよし、駅弁情報を知るもよし、そしてトリックを作るもよし。

もし無人島に1冊本を持っていくなら、

私は迷わず「時刻表!」と答えます。


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