電車に乗ると隣の車両がものすごく近いときがある。方向は一緒。だいたい同じくらいのスピード。「やぁやぁ」と握手したくなるくらいの近距離だけど、別の車両だからできない。あの微妙な距離。目が合うと恥ずかしい距離。やがてどちらかが快速だったりするとビヨーンと速度を上げて一方的な別れが展開される。運命の人だったらどうやって再会すればいいのだ。 単線ではできない、あの並走。 都会ならではの鉄道風景。 今回はあの光景をできれば「内側から」写真に収めてみたいと思います。 |
新橋に来ました 私が個人的に並走のお隣さん感覚を味わったのは、何といっても山手線&京浜東北線。なにせ田端から品川までの並走だ。運転間隔もお互い短い。「ピストン輸送」という言葉が最も似合う2路線ではなかろうか。今回は特に両線が近寄る新橋から東京方面に向けて狙ってみることにする。 快速運転がちょっと複雑 京浜東北線は10:35〜15:35の間快速運転をする。快速運転中は山手線との速度が違ってしまうので、15:35以降に乗ることにした。 新橋を同時に出発する列車を狙い、私が山手線に乗り、カメラマンには京浜東北線に乗ってもらう。そして隣の車両からこんにちは写真を撮りたい。 同時がなかなかありません ちょっとずつズレます 利用客からすれば、ダイヤがズレていることはある意味便利である。田端までだったら来た方に乗ればいいのだから。 山手線は3分間隔だったり、京浜東北線は4〜5分間隔だったりする。しかし中には同時に出発する列車も出てくるはずだ。お互いがズレているからたまに合ってしまう法則。合計が10なら3+4+3でも、5+5でも10は10である。 やっぱりあった!16:25! それではお願いします! きた!お互いが、16:25発。 これに乗っていれば、ドアとドアの接写をとれるだろう。 抜きつ抜かれつしながらも、並走の照れを映し出したい! 甘かった 全然撮れなかった。 まったく並走をしなかった。 ひと口に同時に出ると言っても、完璧な同時ではない。お互い乗客の乗り降りがあるし、先行列車の詰まり具合もある。抜きつ抜かれつさえなかった。京浜東北線が先行。重なることなさそうだったので、御徒町で降りた。 撮ろうとすると撮れないもの よし、今度は逆に御徒町から品川方面へ戻ってみよう。 すると逆の上野方面が並走していました あっちに乗れば並走していたのに!逃した! …まぁ仕方がない。 俳優と鉄道ファンは待つのが仕事である。 じっと待とう。 しばらくすると、17:11発が同時であることが判明! よし、今度こそドアとドアからこんにちは。 次こそ ん、ちょっと京浜東北線が遅い ダメでした 全然並走しなかった。 今度は山手線の先行である。 東京駅に着き、私は思った。これは少し研究がいりそうである。9割以上は運だが、1割は研究の余地がありそうだ。 私は窓の外に電車が見える、東京駅オアゾにあるエムシーカフェに寄って並走がどれくらいあるのか見てみた。 ここからの眺めは最高 高架を行く中央線、その下を山手線&京浜東北線。奥には新幹線まで見える。またこの店のハヤシライスは絶品である。 しばらく電車を眺める。 見ていてもなかなか並走はない。 たまにある隣り合わせ自体が、かなり貴重なことだったことに気づく。 そして夜が近づいてきたころ、 一度だけ並走状態! これも山手線が先行しているので、撮られる側は後方車両、撮る方は前方に乗らないと隣り合わせの写真は撮れそうにない。 日が暮れてしまった。 今日はおとなしく帰り、またあらためて来ることにしよう。 |
今度こそ。 シャツも目立つように京浜東北線>カラーで決めた。 今度こそ! さっそく16:08の同時発車である。 私は山手線に乗り、撮影班には京浜東北線に乗ってもらった。 山手線先行 だめでした 京浜東北線が追い付けそうになかったので御徒町で降りた。また失敗である。 JRのダイヤは15秒刻みだというのを聞いたことがある。同じ17:00発でも、15秒遅かったり速かったりする。加えてそこに混雑によって誤差が出る。 あの並走はよく出くわす気がしていたけれど、ただその体験を印象的に覚えているだけなのだ。 あれは軽い奇跡なのだ その後、何度かチャレンジをした。 自分が先行していたら人の邪魔にならぬよう後方へ移り、追いかけてくる列車を待った。 御徒町→田町を何度か往復した。もちろん、その度に改札を出た。 近寄ったけれど私が別車両 田町で待ち 同時と思いきや一方が早く 並走せず 改札を出て 再び待つ 修行のようである。 だんだんと心が無になってきた。 「なにをやってるんだろう」だけは言わないように心掛けた。 よし、次の同時でダメだったら今回は潔くあきらめよう。夜に近付くと混んできてしまう。あれは日常における貴重な偶然なのだ。「たまたま」を意図的に捕らえるということ自体、もしかしたら愚かなことなのかもしれない。 最後の同時出発 ん。近い 完全に並走だ 真どなり 吉川です! …成功 なんだろうか。 一応、動画も収めた。 何だろう、私のこの間抜けさは。 どうしてもお互いの加速が違ったり、10号車と10号車が重なるとは限らないためズレてしまう。結局隣の車両からこんにちは写真はうまく撮れなかった。 でも私は満足だった。 何度もの往復を重ね、あの並走がすごいことなのだとわかったから。 もし隣に好みの人が乗っていて、同じスピードで走り、照れるくらい近く、幸運にも次の駅で降りられたのならば、きっとその人は運命だと思います。 |
Copyright 2010 So-net Entertainment Corporation