【鉄道について語らいたい】 この連載も前回のバクストから回を重ねて50回。『鉄道は私のものではない』と言いながら、毎回私の主観のみでお送りしてきた。でもたまには鉄道ファンの みなさんと語らいたい。「語り合う」ではなく「語らう」がいい。なんとなく言葉の雰囲気がいい。とにかく座談会のように、はたまた『朝まで生テレビ』のように熱い激論を交わしてみたい。あの番組は見ているといつもハラハラする。「ものすごく会話かぶってるけどいいの?」、「CM入れなくて大丈夫?」、「あの人何について怒ってるの?」。たまらない。 |
吉川総一朗です しかしあそこまで喧嘩腰な必要はまったくなくて、私は鉄道ファンの方に聞きたいことがあった。それは「どうして鉄道が好きになったのか?」という質問だ。これは以前自問自答したことがあって、バクストに「そもそも私はなぜ鉄道が好きになったのか?」という記事を書いた。答えは「見てたら好きになってしまった」というズッこけそうなくらい漠然としたものだった。でもそうなんだもん、仕方がない。 でも不安だ。「こんなんでいいのか?」の確認のためにも、みなさんに聞いてみたかった。私はさっそく鉄道友達のナベさんに連絡し、お知り合いを呼んでもらった。 3人来てくれました 浅香さん(27) ナベさん(24) Yさん(23) 3人の共通点は模型好きだが、当然大の鉄道好き。浅香さんは会社員。ナベさんは「うみかぜ工房」という名の鉄道模型サークルを主催している。Yさんときたら本物の鉄道職員だ(今年入社)。でも外から見ているのと実際に業務をするのとでは全然違うはずで、趣味にしておきたい部分を取っておかずに就職したのは立派だ。 太田プロの稽古場から、鉄道座談会をお送りします。 「なぜあなたは鉄道が好きになったのですか?」 それでは参ります |
【座談会スタート】 吉川:「よろしくお願いします。司会の吉川です。バクスト鉄道座談会、今日のテーマは“なぜ鉄道を好きになったか”なんですが、まずは浅香さんからいかがです?」 浅香さん:「そうですねぇ」 吉:「覚えてます?」 浅:「ぼくは小さい頃に夏休みになると大阪に帰郷していたんです。そこで祖父がいろいろな電車に乗せてくれたんですね。大阪環状線、京阪、阪神、阪急、近鉄と。それは大きかったですね」 吉:「関西は路線もたくさんあるし車種も多いですもんね」 浅:「京阪の京橋―七条のノンストップいまだに覚えてますよ。近鉄のマルーンの一色とか」 ナベさん:「すごいねぇ」 吉:「じゃあ乗っていたら知らぬ間に?」 浅:「あ、でもその前に赤ちゃんのぼくを母親がおぶって、踏切で京成を見せていたらしいんですね」 一同:「ハハハハハハ」 吉:「なぜだ」 ナ:「でも幼児体験はでかいですよ」 浅:「なので今でも京成が好きなんです」 吉:「沿線愛と擦り込みのダブルですね」 浅:「そうですね」 京成好きの浅香さん 浅:「なんかスカイライナーの昔の茶色も見た気がするんですけど、年齢的に絶対無理なんですよ」 一同:「ハハハハハハ」 吉:「見た気になっちゃってるやつだ」 ナ:「あるある。妄想が事実を飛び越しちゃうんですよね」 吉:「乗ってないのに“あれ乗った気がする”とかね」 浅:「あと親がスカイライナーで上野動物園に連れて行ってくれたらしいんですけど、駅に着いたら満足して帰ろうって言ったらしいです」 吉:「スカイライナーだけで満足!?」 浅:「ハイ。親から聞いたことによると」 吉:「移動だけで満足ってすごいですねぇ」 動物園には興味を示さず 浅香さんのお宝・京成3500のボルスタレス試験の台車の写真 吉:「さて、Yさんはいかがですか?」 Yさん:「いやぁ、あんまり記憶にないんですけど…」 吉:「もう気付いたら」 Y:「まぁ元々都営新宿線が最寄りで、そのドアを見ていたらなんで自動で開くんだろうって」 一同:「ハハハハハハ」 ナ:「バカみたいじゃないか」 Y:「どこで開けてるんだろうって一番後ろに行ったら車掌さんがいて」 吉:「あぁ仕組みが見えた瞬間ですね」 Y:「バスだったら運転士さんが全部やりますけど、電車は真ん中に乗っただけじゃ分からないですよね。そこからだんだんと惹き込まれたんですかね」 吉:「今度は自分で開けるわけですから」 ドアが入口のYさん 吉:「じゃあ好き路線は都営新宿線ですか?」 Y:「好きですねぇ。ホームにいて車両が来て地下に反響する音で形式がわかります」 一同:「えー!」 ナ:「また都営新宿線とは渋いよねぇ」 Y:「あのマイナー感がたまらない」 浅:「あそこは車両もマニアックですよ」 Y:「違いがものすごく分かりづらいんですけど調べ出すと面白いんですよ。でも沿線で育ったのがやっぱり大きいです」 Yさんのお宝、最近買ったばかりの富士・はやぶさセット |
【さまざまな原体験】 吉:「ナベさんはどうですか?」 ナ:「ぼくは母親の知り合いがNゲージを持ってたんですよ」 吉:「ほぉ」 ナ:「その知り合いのいらないNゲージをもらったんです。それをもう大事にして離さなかったらしいですね」 吉:「それ何歳くらいですか?」 ナ:「1~2歳」 一同:「1~2歳でNゲージ!」 ナ:「ぼくにはプラレールないんです」 吉:「えー?普通ステップとしてプラレール入るでしょ」 ナ:「ぼくの歴史に玩具なし!」 一同:「すごいなぁ」 ナ:「その時もらったのが“カニ24”でね」 吉:「1~2歳なのに形式まで覚えてるの?ブルトレですよね?」 ナ:「そうです。あとぼくは生まれが蒲田なんですが、帰り道に東急目蒲線沿いを歩いてたんです。その時走っていたのが3450」 吉:「いいですねぇ。ぼくも小さい頃乗ってました」 思い出の3450 ナ:「本当は近くの京浜東北線とか南武線とかに乗ったはずなのに覚えてないんです。目蒲線の記憶しかない。東急の記憶しかない」 吉:「東横線とか田園都市線は?」 ナ:「全部好きなんですけどあそこはわりと新しい車両が入ってたでしょ?でも目蒲線と池上線はモーターがゴロゴロ言ってる戦後の名車みたいなのがあったんですよ」 浅:「いたいた」 ナ:「今みたいに画一的じゃなくて、人が作って人が動かして人が整備してみたいなのがいっぱいいましたよね」 吉:「でもあの路線の哀愁というか悲しみみたいなものを当時からわかっていたんですか?」 ナ:「マセてたんでしょうね」 吉:「すごい子供ですね」 今でも目蒲線と呼びたいです |
【聞いてみてよかった】 吉:「みなさん原点はやっぱり生まれ育った場所なんですね。浅香さんは京成、Yさんは都営新宿線、ナベさんは目蒲線(笑)。そこでそれぞれ鉄道愛が育まれて、だんだんすべての鉄道に目がいくようになると」 一同:「そうでしょうね」 吉:「いやぁ今日はなんだか嬉しかったです」 浅:「やっぱり鉄道は日常の感じがいいんですよ。これからも電車の毎日を大事に見て、乗っていきたいです。時間がなかったりなかなか難しいんですけれど」 ナ:「あそこもっとたくさん乗っていれば無くならずに済んだのにとか」 Y:「寝台とかも。ぼくは寝台特急みたいな乗って楽しいものを増やしたいです」 吉:「頼もしい!」 ナ:「あとは観光地化せず、毎日がんばっているところに行きたいですね。熊本電鉄とか」 吉:「あぁ、あそこは東急の青ガエルもまだ現役ですもんね」 ナ:「えぇ、あれはもう大好き。たまらんですよ」 吉:「子供の頃走っていたのがまだ走ってるってすごいですよね」 ナ:「えぇ。あれらを含めて、もう鉄道は私にとって神です」 吉:「神!」 計3時間、鉄道以外の話題はひとつもなし!また次回! |
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