光が丘
東京フィールドワークIN光が丘
 団地に行ってみたいと思いました。それもビッグな団地の街に−。

 乱立する文明の狭間を歩いてみたい。圧倒的な集合体を見てあっけにとられたい。「競争率何倍!」という現代の団地事情を肌で感じたい。団地妻に手ほどきを受けたい…。むほほほほ。

 団地。夕暮れ。カレー。ともだち。はたまた一転、ダークサイド。無表情でのっぺりとしていてほの暗いあの感じ。欲望、整然、闇。

 イロイロな好奇心が交錯し、団地に惹かれました。行くなら有名な団地シティがよかろう。東京で有名な団地シティといえば、高島平、多摩センター、赤羽、光が丘あたりでしょうか。赤羽はフィールドワークで、高島平はロケでそれぞれ行ったことがあるし、多摩センターも高校生の頃デートで行ったことがある(サンリオ・ピューロランドに行った。キティちゃんと写真を撮った)。となると残りは、光が丘。

 おう、光が丘。いいではないか。3つの点に於いていいではないか。

 1、いかにも歴史のなさそうなその地名。門前仲町、調布、柴又と、放っておくとぼくはすぐに歴史の深い街に行ってしまうので、正反対でよさそうである。
 2、大江戸線に乗るとよく耳に入る「光が丘行き、電車が参ります」というアナウンス。どんなところなんだろうと昔から気になっていた。
 3、練馬区というぼくにとっての未開の地。ほとんど足を踏み入れたことがない。

 3つ条件が満たされれば十分。ということで今回の東京フィールドワークは光が丘に決定!

 さーて、どんなところなのでしょうか。当然のことながら行くのは初めてです。
今回はいつものオートバイさんではなく、趣向を変えて暇そうにしていた友人、バモスさん(26歳・男性・独身)と共に。「写真を撮るならまかせろ」と名乗りを上げてくれました。

 よし光が丘。大森並みに地味だけど、たまにはそんなところも歩いてみようじゃない。

 まず大江戸線の光が丘行きに乗ります。練馬方面は空いてるだろとなめていたら、これが意外と混雑しています。午後2時だというのになかなかの乗車率。石原都知事の笑顔がキラリ。
 新宿から約20分。到着。さっそく地上に上がるとたくさんの商業施設が飛び込んできます。ケンタにミスドに和民にLIVIN。スポーツジムやら病院やら。あらゆる施設が駅前に集中し、見事に完結している。この整合性は何だ。愉快で便利な感じは何だ。そして光ヶ丘団地はどこだ。どこだ。

大江戸線光が丘行き

光が丘駅

団地はどこだ


 ぱっと振り返ると、ありました。団地団地団地。団地団地団地。団地団地団地。2005年秋の太陽に照らされて、光り輝く無数の集合体。なんとも誇らしげ。バーンバーンバーンと見事にそびえ立っています。シャキーン・シャキーン・シャキーンと整列しています。そして街全体がとってもキレイ。道にはゴミひとつ落ちていません。たくさんの緑。陽光。子供たち、はしゃいでいる。いい光景だ。

 これで新宿まで20分というならば、競争率が高いのも頷けます。自然と首がコックンコックン縦に動いてしまう。文句のつけようがない。もっと怖いところかと思っていましたが、全〜然。昔のような「勢いだけ作ってしまった」乱立っぽさはなく、「ニーズに合わせて作っています。足りなかったら言ってください」といったムード。都政の計画。ここに結実。もちろん柴又のような深みはないけれど、このライトな感じが新しい東京の住宅地という感じで様になっています。過密な東京の住宅事情を鑑みれば、これだけきれいで緑があって小学校がたくさんあって(第7くらいまである)都心に近いのならば、他に何を望むといおう。

 団地の間には四季を彩った公園が点在。
 「夏の雲公園」や「秋の陽公園」など。こりゃ子供はたまらんわ。

囲まれて

囲まれて

囲まれて

遊んで

まぎれて

光らせる


 これだけ集合住宅が多いと、中には変な人もいるんじゃないのぉ〜。ほら夜中とかさ、コート着てさ、襟立てちゃってさ、ズバッとコートを広げてまざまざと、みたいなね!
 心配ご無用。光が丘のみなさんはしっかりと監視の目を持っていて、変態の懸念しているこのぼくが、とっても怪しい目で見られてしまいましたよ。「ほーい!」とか「へーい!」とか写真取るときに叫んだりしていたので、「あいつ、大丈夫か、通報?」みたいな感じで。警察の方も自転車でパトロールをしていたり。しっかりとした監視体制が敷かれているようです。

 光が丘は優等生。ホテルや清掃工場があれば、「光が丘公園」なる広大な公園も完備。日曜日なんかはここで親子キャッチボールやカップルキッスまで、絵に書いたような日本の休日絵巻が繰り広げれることでしょう。野球場、テニスコート、バードウォッチング、芝生広場。平日ならば本でも読んでボーっとするもよし、休日ならばワイワイ盛り上がって胴上げするもよし―。

 すべてが完結していて、隙が見えぬ。
 今回はこれでもう、おしまいか…。

清掃工場

走った

大学生のテニスを嫉妬しながら見る

今後の展開について考える

とりあえず木登り

叫び

まぎれる


 このままではいかん。別にいかんことはないけれど、さわやか過ぎる。おだやか過ぎる。「さわやか」で「おだやか」だったら最高じゃないかとも思いますが、清廉潔白だけが人生じゃなかろう。なんかないかね〜とあたりを見渡すと、ふと「成増方面」という看板を発見。

 成増。なります。ナリマス。

 おっとー、来ました。これまた未開の地。成増はたしか板橋区だったっけか。光が丘とは違った、泥臭い人情ってやつに触れられるかもしれない。行ってみよう、成増。どれくらいで着くのかは知らんがとにかく歩こう歩こう。
 歩くのはお金がかからなくていいなぁ。体にもいいしなぁ。なんか車の通りが激しくなってきたなぁ。お腹空いたなぁ。そういえばベーグルサンドを作ってきてたんだ。おしゃれな食いもんだなぁ。食べよう食べよう。経費削減だ。自分で作っておきながらなんだけど、うまいなぁ。自分が作ったからうまいのかなぁ。単にお腹が空いているからうまいのかなぁ。それともスモークサーモンを使えば料理はなんでもうまく感じるのかなぁ。でもそばに入れたらまずいだろうなぁ。
 とか逡巡しているうちになんか大きな道に出ました。川越街道です。非常に変な匂いがする。くさい。排気ガスとエスニック料理を混ぜたような匂いがする。一気に街の色が変わったなぁ。おっと、見えてきました。成増駅だ。

 光が丘から約15分ほどで成増に到着。やはり光が丘とは趣きがぜんぜん違います。とたんに街が混濁として、人の往来も多いです。中華料理屋、パチンコ店、ダイエーに商店街。さっきまでこざっぱりとしていた脳内が、急に稼動し始め状況把握に苦戦しております。

 東武線沿線特有の「えんじ色」の粒子が散布されて、街もなんだかえんじ色。

交差点で思案

ベーグルを喰らう

なんかくさい

成増駅に到着

一気に雑多

事務所に明日の予定を確認をする


 成増は南口は人情、北口は近代といった風情で非常にバランスのいい街です。地図を見ると「東京大仏」という魅力的なスポットもあるようですが、残念ながらもうおしまいの時間。今度また一人で行ってみよう。

 街をしばしうろつき、駅に戻り、路線図を見てみると、成増の隣は和光市じゃないか。和光市。ぼくは和光学園というちょっとへんぴな学校に通っていたのですが、よく「和光」と言うとこの和光市にあると勘違いされました。ぼくが通っていた和光は町田の方にありました。まぁ勘違いされても仕方がない校名です。しかし非常になじみにある名前だ。和光市か。これは行かなきゃなるまい。歩くのは無理そうだから、電車に乗ろう。

 えんじ色の東武線に乗り、4分ほどして和光市に到着。駅前。中規模。小奇麗。ニュータウン。特に変わったところはなし。学校帰りの高校生。郊外のありふれた夕暮れ風景。

 あれ、よく考えればここはもう埼玉県じゃないか。

なります

電車に乗って

わこうし

郊外だ

埼玉県の和光高校

わこわこ踊り


 前回の千葉県・松戸に続き、今度は埼玉県・和光市に来てしまいました。厳密に言えばこれは「東京フィールドワーク」なのだから東京の街を歩かなきゃいけないのでしょうが、まぁいいとしよう。だって埼玉県と東京都は律令制が敷かれた7世紀から明治4年の廃藩置県に至るまで、ずっと武蔵野という同じ括りだったわけだし。埼玉には東京がかつて草ボーボーだったころの残滓が偲ばれるわけだし。いわば兄弟のようなものだ。何だそのふてくされた郷土史家みたいな言い訳は。

 さてどうしよう。東武線に乗って戻るのも負けた気がするし、和光市でフィニッシュと言ってもここは埼玉だし、いい方法はないかと街を見渡していると、ありましたよ、もうひとつの交通手段、バス!BUS!これで東京に戻ればいいんだ。できれば光が丘に戻れれば一番いい。もうすぐ夜だし、光が丘もさっきとは別の顔を見せてくれるかもしれない。昔のRCサクセションのようなクネクネとした、艶っぽい夜がいいな。と、光が丘行きのバスはないかと探していると、ロータリーにもうすぐ発車しそうなバスが。エンジンをブルルルンと唸らせ、「そろそろ出るぜ」とでも言いたげ。行き先をぱっと見ると

 「大泉学園」

 大泉洋!もう乗っちまえ!

大泉学園行きバス

やけに揺れる

暗くなってきた


 「大泉」という2文字だけに惹かれ、なぜかたどり着いた大泉学園。外はいよいよ日が沈み、みなさん帰宅の足が早っています。大泉学園かぁ。西武線だよなぁ。
 眠れない夜はよく「水曜どうでしょう」のDVDを見て朝を迎えるぼくにとって、大泉洋さんは最近のマイ・ヒーロー。だからといって別に大泉学園に洋さんがいるわけではないし、特にこの街に興味があるわけでもない。というかむかしこの近くの撮影所に来たことがある気がする。そうだ!高島礼子さんのドラマにちょい役で出たときに来たんだ。たしか「修前寺」という堅い役名で、弁護士の卵の役だった。ぼくは入念にセリフを覚え、気合を入れて芝居をしたのだけれど、オンエアで使われたのはCMの提供の後ろかなんかで、見て非常に肩を落としたんだった。

 流れ着いた、大泉学園。

 埼玉の次は、来たことのある街に来てしまった。

大泉に誘われて

この街、来たことがある

喫茶店で反省


 ということで今回は光が丘→成増→和光市→大泉学園とさまよってみました。興味のエキスだけに頼って歩いてみました。団地の街で空を見上げ、公園で叫び、県境の街で恍惚とし、えんじ色の電車に乗って郊外へ行き、もうひとつの母校をチェックし、バスに思いっきり揺られ、もうひとつの大泉さんに出会った。よく言えば「怒涛の展開」。悪く言えば「行き当たりばったり」。

 またふらーっと出かけましょう。
 次はもっともっとディープでマイナーな街に行ってみるとするか。

 未公開写真

TOKYO FIELD WORK 2
TOKYO FIELD WORK 2