「大森」の由来ははっきりしないが、単純にそこに大きな森があったからという説が有力。昔は蒲田と並ぶ巨大な区域で、現在の「大田区」という名前は大森の「大」と蒲田の「田」を足したもの。また山王地区には昔から多くの文人たちが居を構え、生活していたらしい。大森貝塚や文人たちの住居跡など、考古学・文学の両面で見ても歴史的価値の高い街。最近では都心とのアクセスの良さから大型住宅が多く立ち並び、一流企業もオフィスを構えている。大田区大森。地味だが奥の深い街。

「次はイメージすらないところに行ってみたいなぁ」…お、こんにちは吉川です。
ということで、今回の東京フィールドワークは大森です。月島、早稲田、巣鴨と
いろいろと行ったことのない街を巡ってきましたが、そろそろ知名度の低いところにも
行ってみたいなと思い、簡易地図を広げ、オートバイさんとチャットで話し合った結果、
出てきた結論は「大森」でした。地味だなぁ、どこにあるのかさえよくわからないなぁ。
でもそれこそが「知らない街に行ってみる」東京フィールドワークの愉しみ。
もうコンセプト通り。唯一の大森データは教科書で習った「大森貝塚」だけ。
ということで乾いた空気の秋晴れの中、行ってきました大森へ。
一体どんな街なのでしょう?ワクワクしますね。と言いながらぼくは行ってきた後に
これを書いているので、もう完全なる大森博士ですが。それではご案内しましょう。
どこにあるのかさえよくわからない、大きな森、大森へ。

まず京浜東北線の大森駅でおります。品川からふたつ目、意外と大きな駅です。
改札を出ると、いきなり「第11回大森駅長杯ゴルフコンペ」という横断幕。
相当ゴルフが好きな駅長さんなんですね。でも「大森駅長杯」ってなんか違和感
あるなぁ。もう11回もやってるしなぁ。ということでいきなり面を食らう。
さて、目指すはやはり大森貝塚。巣鴨が地蔵なら、大森は貝塚だ。
でもその前に、「貝塚」ってそもそもなんだ?山みたいになってるのか?
たぶん歴史的には相当貴重なものなんだろうけれど、一体どんな形をしてるんだ?
おー、楽しみだー。大森といえば、大森貝塚。どんなところなんだろう?
商店街を少し歩くと、看板にそっけなく「大森貝塚→」とある。一瞬どこか
わからない。ん?おもいっきりビルの谷間だぞ。階段があるぞ。異様に狭いぞ。
下りてみる。嫌な予感がする。線路が目の前に迫る。石碑があった。

「大森貝塚」

…なんだ、こりゃ。こんなにひどい名所は今までに見たことがない。
まず異様に線路沿いにある。もう横をビュンビュン電車が走る。かなり怖い。
そして狭い。人がすれ違えるかどうかのところに、石碑がどんと立っている。
早稲田の坪内先生以上の冷遇だ。お、近くに説明書きが。

「1877年(明治10年)6月、アメリカの動物学者E・S・モース博士が横浜から
新橋へ向かう途中、汽車の窓から貝殻が堆積しているのを発見し、間もなく
日本で最初の科学的発掘調査が行われた。これが大森貝塚である。それまで
日本には考古学は存在せず、この大森貝塚の発掘調査は、日本の近代的考古学
の出発点となる記念すべき出来事であった。」

だってさ。
あ、じゃあこれはただの記念碑なんだね。そうかー。だからこんなひどい場所に…
ってやっぱりあまりに電車が近すぎる。これじゃあ電車マニアの格好の巣だ。
おーい、おおもりぃー。いきなりやってくれるじゃんかよぉー。

大森駅改札。出場しようかな?
大森貝塚入り口。ビルの谷間にある。
電車マニアにはたまらぬ場所。


おーい、どうするよぉー。もうおしまいか?これだけか、おおもりぃ!?といろいろ
愚痴をたれていると「→しながわ水族館」の看板が。いいねぇ!!水族館。
いきたい、いきたーい!と子供のようにはしゃぐ24歳ふたり組み。あ、オートバイは
25か。ってことは次26か?26!?おいおい、おーとばーい!バイトぐらいしろよぉー。
(フォローしておくと彼はちゃんとラーメンズの下で働いています。たぶん、ちゃんと)
“じゃあ、いこうぜ”としながわ水族館行き決定。もちろん行ったことはありません。
ということで15分の道のりを30分かけて歩きます。大森をじっくりと観察しながら。

まず駅ビルを抜ける。途中にチケットショップがあり、値段を見てみると、これが破格。
ポルノグラフティの武道館が1枚2600円。たぶん半額くらいじゃないの?
吉川晃司3000円とか、巨人戦ドーム最終戦が2500円とか、とんでもなく安い。
大森は、実はチケットの穴場なのか?でもなんで大森?全然真意わからず。
そして街を歩いてみると、大森はマンションや大型アパートがとても多いのがわかる。
大きな建物がばんばん視界へ飛び込んでくる。そしてそれにまとわりつくようにして、
公園も多い。それもけっこう広い。夕方前、サラリーマンが休憩している。
子供がわいわい遊んでいる。とてもいい光景。もちろんぼくも遊ぶ。滑り台を駆け上がり、
トーテムポールによじ登る。空が青い。あたりを見渡すとかっちょいいビルもある。
美容院も洒落ている。通行人に丸見えだけど、イカしてる。たぶんカット5000円だな。
巣鴨とは大違いだ。あそこは900円だったものなぁ。

ポルノが激安、2600円。
トーテムポールにしがみつく。
坂を駆け上がる。

  

青空と大型団地。
まるみえ美容院。
青空とビル。

    

さて、ほどよく歩くと見えてくる駅、京急線の「大森海岸」。しながわ水族館へ
行くにはどうもこっちの方が近いらしいです。ガードをくぐり、国道を道沿いに歩くと、
ありました、これまたでっかい公園が。品川区民公園です。しながわ水族館は
この施設内にあります。でもこの公園もなかなかいいですよ。野球場が二面あって
キャンプ場があって、貸し自転車に、水上バスまで出ている。お台場を通って、
日の出桟橋まで行けるらしいです。水上バスも楽しそうだったけれど、
ぼくらの目的はあくまで水族館。貝塚の恨みは水族館で晴らす。ということで
見えてきました、お目当てのしながわ水族館です。


京急・大森海岸駅。
歩道橋を渡る。
 しながわ水族館に到着。


水族館に来たのなんて何年ぶりだろう。あ、そうだ、20歳の頃に江ノ島水族館に
行った以来だ。あそこは「みなぞう君」という怪物のようにでかいアザラシがいて、
それがまったく動かなくて、ペンギンとかも全員そっぽを向いていて、最高に
つまんなかったなぁ。ここは大丈夫だろうか?と心配しているといきなりの
イルカ!わーいわーい、イルカだぁー!!ゴム素材みたいだぁ。テカテカしている。
残念ながらショーの方はもう終わっていて、そのかわりに放課後の居残り特訓
みたいなのが行われていた。これはこれでおもしろかった。
そして少し歩くとペンギンと再会!!よぉ久しぶりー、元気してたぁ?と話し掛けるも
やっぱり無視。江ノ島に続き、品川のペンギンもそっけない。

さて、このしながわ水族館は1Fが「海面フロア」、B1が「海底フロア」に別れていて、
やはり目玉はB1にある「トンネル水槽」です。なんと海底の中を歩けるのです。
これはよかった。大迫力だ。これぞまさに海中散歩という感じで、幻想的な海の中を
エイやらタイを見上げながら、歩くことができます。ばかでかいカメさんなんかもいます。
ちょっとだけ気持ちが悪いです。でもここは楽しい。カップルで来てももちろんグーです。
っていうかそっちの方がいいのかな?男同士で来てもね。あんまりムーディーに
なられても困るものな。おっと、そんなぼくらにピッタリのコーナーがありました。
「ヒトデわしづかみコーナー」です。これは気持ち悪いですよぉ。指に張り付きます。
これは好奇心旺盛な子供たちが遊ぶところでしょうね。おとなの人はやめておいた方が
いいです。「どうだ、俺はこんな気持ち悪いものもつかめるんだぞアピール」をしたい
人だけにおすすめします。でもたぶん引かれるでしょう。あとは他にもアマゾンに生きる
魚たちや、珍しい魚たち、ナポレオンフィッシュ、ゴマフアザラシなんかがとても楽しい。
そして最後にかましてくれるのがサメ。「シャークホール」と呼ばれるでっかい水槽の中を
悠々と泳ぐ海の王者。怖い。筋肉質のボディに鋭い牙。尖った鼻に、切れ長の目。
最後の最後で海の恐ろしさを叩きつけられ、終了。まさに最後は「サメとともに去りぬ」
という感じで、サメの直後に「出口」の看板。おいおい、ちょっとそっけないぞ。でも
この怖い気持ちのまま終わるのかよという、ポカンとしたところが、逆に魅力か。
ということで、しながわ水族館は可愛らしいイルカで始まり、ヤクザのようなサメで終わる、
なんともアン・ハッピーエンドなイカした水族館でした。

イルカと対面。子供顔になる。
ペンギンと再会。無視される。
海中トンネル。きれいだ。

 

「俺はこんな気持ち悪いものも
つかめるんだぞアピール」(涙目)。
まぎれる。
サメの標本。戦闘機みたいだ。


さて、外に出るともう五時。寒い。秋だ。その奥には冬が透けて見えるようだ。
昼間は晴れていて暖かかったのに、夜は乾いた空気の風が冷たい。
でも夜景がけっこうきれいだ。高速道路も無機質な感じでわるくない。
水族館のかなたには平和島競艇が見える。また逆方向に歩くと、大井競馬場もある。
大森は、ギャンブル好きの方にはけっこうたまらない場所でもあるようです。
その日はやっていなかったけれど、大井競馬場はトゥインクルレースを開催しているので、
夜だって熱くなれる街です。ぼくらは無計画に来てしまったけれど、きちんと計画を立てて
行けばもっと、大森は楽しいと思います。例えば…

14時に大森駅で待ち合わせ。→14時10分大森貝塚を見る。愚痴をたれる。
→15時しながわ水族館。いろいろ回り、15時30分からのイルカのショーをみる。
16時、レストラン「ドルフィン」で休憩。公園を見渡しながら、軽い食事をしてもオーケー。
その後ギャンブル好きの人は大井競馬場へ。夜はトゥインクルで盛り上がる。
嫌いな人は16時40分発の水上バスに乗って、東京湾クルーズを楽しんでもいい。

ね、こんな感じでいけば、けっこうおもしろいですよ。でも絶対に貝塚は見なくちゃだめです。
大森といえば貝塚なんです。誰がなんと言おうと。このつまらなさを体感すれば、なんでも
おもしろく見えてきます。アジを見ても感動します。動いているからね。でも本物の大森通に
なりたいのならば、「第11回大森駅長杯ゴルフコンペ」が一番でしょうね。勇気を出して、
参加してみましょう。

夜が冷えてくるときのせつなさはなんだろう。
大森から見る月。
夜景の真裏は高速道路。殺風景。


ということで第4回東京フィールドワークも無事終了。
前3回は暑かったけれど、これからはどんどん寒くなっていきます。
でも秋の木枯らしに吹かれながら、知らない街を歩いてみるのもいいんだろうな。
ということで、また次回。次はどこに行こうかな?