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この夏は足の親指と人差し指のあいだに

2004,08,15,Sunday

この夏2回目のバーベキューは総勢7人で行われた。このバーベキューに関しては、秘密裏にHくんが暗躍しており、ただ日時だけが指定され、誰が来るのかぼくは知らされていないのだが、まあ予想範囲を大幅に超えた人物がやって来るわけではないにしろ、どうやらぶっつけ本番的な緊張感を捏造しようという思惑がHくんにはあるらしいのだ。しかしながら、実のところ、「ねえ誰が来るの?ねえHくん。今日誰が来るの?」と執拗に訊ね、そのような思惑をなし崩し的に脱臼させてしまうのはいつものぼくの役目であるといってよい。

前回よりもさらに上流で行われた2回目は、日よけとして簡易式テント(みたいなやつ)が導入され、さらに大容量のクーラーボックスまで持ち込まれ、それは運ぶのに骨が折れそうなほど骨が折れたけれども、そしていまもなおぼくの肩は甲子園を投げきったかのように疲労しているのだけれども、バーベキュー環境としては格段に改善された感があった。その上、天候的にも申し分なくこの日はバーベキュー日和であり、そのときには知る由もなかったが、次の日の終戦記念日があの寒さと雨模様であったことを合わせて考えるのならば、まさに僥倖としかいいようのない記念碑的バーベキューであったと多少大袈裟ながらも申し添えておくことにする。14日にしてよかったね。

そしてなかなか具体的なバーベキューの記述に移らないのは、もうほとんどなにも思い出せぬほどにまでぼくが泥酔してしまっていたからであり、日が経つにつれて痛むようになってくる肩や腰や足の鈍痛といったことから想像するに、おそらく年齢にそぐわぬようなはしゃぎっぷりを恥ずかしげもなく周囲に晒していたものと思われる。足の裏は傷だらけであり、腰は川底の石にしたたか打ち付けでもしたのか近年稀にみる痛みであって、もはや正常な歩行が困難なほどだし、いちばんお気に入りの白地のTシャツは赤ワインによって赤黒い染みを作っているのだ。泥酔とはなによりもまず感覚の麻痺である、ということの実存的証明。

それでも、薄れゆく記憶の中にあって、この夏は足の親指と人差し指のあいだにしっかりと刻まれており、その鮮明さは、日常的に屋外でビーチサンダルを履くはじめての夏であるという事実を差し引いてもなお、驚くべき鮮明さでもって、この夏を反復してやまない。そう、このビーチサンダルは、そもそも夏の労働用に購入されたものであり、この何年間か、バイト先の室内履きであったところのものなのだ。端的にいって、この夏はそのバイトをしなかった。そしてそれと引き替えにするように夏の屋外へとビーチサンダルを持ち出すことができたというわけなのだ。もし例年通りであるならば、このビーチサンダルは、いまもなお、あの薄暗いスチール製のロッカーの中にあったはずなのだ。

2004, 08, 15, Sunday

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