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タイムリープの夢

2012,05,30,Wednesday

かつて交際していたある女の子が、ぼくとわかれてから数年後に亡くなってしまった。という大前提となる設定(架空の)がまずある。ぼくは彼女のことが大好きだったので、彼女が死んでしまったことについて、まったく受け入れられていない。死ぬまえにわかれてしまったので、死んでしまったという実感はあまりないが、そのことはなるべくかんがえないようにして暮らしている(このことは、つまり死んだことにでもしたい、というぼくの気持ちが反映されているような気がする)。

あるとき、実際には彼女とはわかれたはずの歴史が改変された過去へとぼくはタイムリープしてしまう。つまりそのまま彼女とわかれることがなかった過去へと、記憶を保持したままぼくは移動する。ふたたび彼女といっしょにいられることをぼくはとてもよろこんでいる。もしあのまま付き合っていたらどうなっていたのだろう、というような想像をまるごとみたすような日々がつづく。それはほんとうにしあわせな日々で、いったいどうして実際の歴史でぼくたちはわかれてしまったのだろうか、とすらおもう。だがある時点で、彼女が近いうちに死んでしまうのだという事実にとつぜん気がつく。

そして彼女の命日とされる日がやってくる。ぼくは彼女がその日に死んでしまうことを知っているが、ぼくがそれを知っていることは彼女に見透かされている。ぼくたちはこたつにはいっている。9時と6時のかたちで90度に向き合ってすわっている。彼女は正面を向いて、つまり3時の方向を向いて「それなのにどうしてなにもしなかったの?」と冷たい声でいう。

2012, 05, 30, Wednesday

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