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光について

2005,12,17,Saturday

いま、この世界のどこかではたくさんの雪が降っている。この日本のどこかで。この地球のどこかで。この宇宙のどこかで。部屋の中でじっとしていると、そういう雰囲気がする。どこかで雪が降っていてもおかしくはない、といった気配のようなもの。そういう空気がそこはかとなく漂っているような気がする。というよりも、おそらく、ニュースでやっているのをわたしは見たのだ。雪が降っている地方のことを知らせるニュースを。

たとえばニューヨーク。ニューヨークでは雪が降っている、とニュースでやっていた。本当かな。わたしはニューヨークが存在することをうまく考えられない。そこにいま、友人が住んでいる。でもうまく考えられない。

そして日本の、日本海側の地域にも、たくさんのたくさんの雪が降っているそうだ。

わたしは一度だけ日本海に行ったことがある。真冬だった。たどり着くまでに雪のせいで死にかけたのだった。わたしたちは砂浜でサッカーをした。寒くて爪先が砕けそうだった。早朝で、世界の果てみたいに閑散としていた。

いま、わたしの部屋の窓から雪は見えない。わたしの部屋の窓から見えるのは、わたしが午前中に干した洗濯物である。いまは午後9時だ。そうだ、早く取りこまなくちゃいけない。その向こうには教会が見える。一昨日あたりから、クリスマスツリーが飾り付けられた。そのもっと向こうには大学がある。キリスト教系の大学だ。しばらく前から巨大なツリーが二本立っている。キラキラと電飾が眩しい。きっと、あの電飾を消すという仕事をして家路につく人間がいるのだろうとわたしは想像している。もしわたしがそういう仕事に就いたとしたら、ということを最近はよく考えている。

そのもっともっと向こうには、むすうのひかり輝くツリーたちが立っているはずだ。光のつぼみを膨らませて、それらはまるで夜のあいだだけ咲く花のようだ。

わたしはこの部屋に住むようになってから、光についてよく考えるようになった。本当のことをいえば、昔から光について考えることをわたしはしてきたように思う。どうしてだろうな。それはもしかしたら、わたしの視力が2.0であることと関係があるかもしれない。

2005, 12, 17, Saturday

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