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デパートの夢の話

2004,09,30,Thursday

とおもったら2時間寝ただけで起きてしまう。隣のアパートの前、おれの部屋の真下付近で高校生たちがでかい声でしゃべりまくっていやがる。本当に勘弁して欲しい。まだ11時じゃん。やっと寝ついたところなのに。はじめは中学生かとおもったが、某都立高校の校歌を歌っていたので高校生だとわかった。続けて中学の校歌(おれの行ってたのと同じ中学だ)を歌っていた。ってなんでそんなとこで校歌歌ってんだよ。学校行けよ。つーか死んでくれ頼むから後輩。と本気で思う。ものすごい音を立てて窓を閉める。くらいしかできないが。睡眠不足でぼうっとしているので台所にあったバーベルに蹴躓き足の指をしたたか打ちつける。ってなんでこんなとこにバーベルがあんだよ!何キロあんだよ!9月も終わりかぁ。なんとなく、関係ないけどそうおもう。

で、舞城王太郎のデビュー作である『煙か土か食い物』を読んでいたら、どうしておれが舞城王太郎を読み続けるようになったのかを思い出した。そこにはこんな一節があった。これがきっかけだったんだな。忘れてたけど。

俺は暗いデパートの夢を良く見る。閉店後か休業日のデパート。暗がりの中に商品が静かに並んでいる。殺されて頭や手足を切られて冷凍庫のフックに吊されて並べられた牛みたいに無言のままハンガーに吊されている服たち。静かな虐殺の気配が棚に置かれた服たちにも漂っている。通路にもレジにもどこにも人はいない。暗いフロアには俺しかいない。嫌な夢だ。俺はこの夢が大嫌いだ。この世で誰か俺以外に暗いデパートの夢を見た奴がいるだろうか?この背筋がぞっとするような夢を見て逃げ出すように目蓋を開けた人間が他にいるだろうか?

そう、おれもまた暗いデパートの夢を何度も繰り返し見る人間だった。だからここに書かれていることが嫌というくらいわかる。おれは誰もいないデパートに閉じ込められて出られなくなる夢を何度も見て、しまいには夢の中でおれはデパートに住むようにもなった。もう出られないと夢の中のおれはおもったのかもしれない。薄暗いデパートの奥、さらに薄暗い一画にひっそりと存在している階段は実にいろんな場所に通じていた。迷宮のように曲がりくねったトイレへの通路。やっとのことでトイレにたどり着きおれは用を足す。人影はないが常に誰かに見られているような気がする。来た道を引き返すとそこは廃屋に繋がっている。それは一瞬で廃屋と化してしまったデパートであったり、また別の廃屋と化した民家であったりした。そのデパートが建てられる前にその場所にあった、とかそういった感じの家だ。そしてそれらの建物はすべてデパートに内包されている。デパートそのものでさえ、さらに巨大なデパートの一部分なのだ。どこまでいっても外に出られない入れ子デパートなのだ。おれはおそるおそる目の前のドアを開ける。いつも決まってどこかのドアを開けることになるのだ。そうしないわけにはいかない。そしてドアの奥に広がっている部屋の光景を描写して、そこでおれが感じることになる気分を他人に伝えられるような力はおれにはない。部屋にはもちろん誰もいない。だがさっきまで、たったいまおれがドアを開けるまでその部屋には誰かがいたのだという気配だけが残っている。そこは子供部屋だ。床には足の踏み場がないほどたくさんの玩具が散らばっている。ただその玩具の持ち主である子供だけが消えてしまったのだ。いや、子供たちといった方がいいかもしれない。その部屋にはかつて子供たちがいて、いまではもういない。その事実が部屋の空気を異様なものにしている。おれは一刻も早く戻らなくてはとおもう。元の場所に戻らなくてはいけない、と。あの、最初にいたデパートに。いまではあの暗いデパートでさえ懐かしく感じられる。だがもちろん、おれはもう二度と戻ることはできない。どこにも戻ることはできないのだ。ドアを開けるたびに部屋はまたどこか別の部屋に繋がっていて、だんだんと暗闇が濃くなっていく。執拗に、そして念入りに誰かが暗闇を上塗りしているのだ。

というわけで、デパートの夢の話でした。おしまい。日常に戻る。

ゴキブリを見つけたのでゴキブリホイホイをそいつの近くに置く。あとで見たらゴキブリがゴキブリホイホイに入っていておれは大変満足する。こんなことで満足できるなら、ゴキブリにも確かに存在価値があるのだという気にさえなってくる。中にゴキブリがいるゴキブリホイホイと、空っぽのゴキブリホイホイの違いについておれは考える。中にゴキブリがいるゴキブリホイホイを見ていると、腰の当たりがぞわぞわしてくるなぁ。ひょっこり窓から顔を出したら超びっくりするだろうなぁ。とか、そういったこと。そしてそんなことを考えるのはやめにする。今日こそは5時間以上眠るべきだし、とにかくたくさん眠るべきなので早めに、とはいえ午前1時に最後のテープチェンジ(まだゴダールの映画をやっているのだ)をしてからベッドに入る。だが、またもや2時間で起きてしまう。駄目だ。眠れない身体になっている。実家に帰ってから何時間だ、7時間しか寝てないじゃないか。やばい。また喉が痛みだした。がもう1ミリも眠れないので仕事。

2004, 09, 30, Thursday

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