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官能的なイルカの群れが踊りながら喉元に

2004,07,05,Monday

いまモスバーガーにいるのですが、なんとも不快な出来事がありました。不快といったらいいすぎなのですが、意識的にため息をつきたくなる、とでもいうような感じの出来事。といってもまだいいすぎなくらい些細な出来事なのですが、とにかく、店内に一人の女性が入ってきたのですね。このモスには出入り口が2つあります。いわば「正面玄関」と「勝手口」の2つです。ところでぼくはその「勝手口」から店内に入ってくる人間がどういうわけか許せないのです。別にふつうの出入り口なのですが、とにかく嫌なものは嫌なのです。とわざわざいうほどでもないですし、いったいなんの権利があってこんなことを主張しているのか自分でも意味がわからないのですが、「勝手口」から入ってくるのは圧倒的に女性が多い。そもそもそのモスは女性客が多いので、これは当たり前といえば当たり前の話なのですが、その女性も「勝手口」から入ってきました。30代の、スーツを着た女性です。「正面玄関」から入ればすぐに注文カウンターがあるのですが、ってこの「〜なのですが、〜です」っていうのが自分でも鼻につくのですが、ってわざとやってるのですが、「勝手口」から入った場合、客席を横断して注文しに行くというような格好になるわけです。そのあいだにハンドバッグやらなんやらを自分が座りたいところへ置いて席を確保してから注文しに行くのは、これまた女性が多いのですね。件の女性も店内に2,3歩足を踏み入れると「どこに座ろうかな」というように店内を見回しました。70%の座席が空いています。ただ禁煙席は満席でした。そこで彼女は何歩か喫煙席の方へ歩き、しかしながら踵を返して店を出て行ったのです。おしまい。これのどこにむかついているのか、はっきりいって書いてるうちにもう忘れてしまったので、つまりそれほどむかついていなかったことになりそうですが、無理して思い出して書き続けます。っていうか、いま店内には男子がぼくしかいないので、この文章を横から覗き込まれたら中央の座席を空けられ床に転がされ集団暴行されること受け合いです。でも書き続けます。牢獄で小説を書き綴った南米の作家のように。

いいじゃないか、と。喫煙席で。だってがらがらだし、煙草を吸ってる人間もいないんだから、喫煙席に座ればいいじゃん。なんなの。その潔癖さ。というか、非寛容さ。書いてて思い出してきましたが、そう、これは、あのときと似たような不快さだ。何年か前、ぼくはマクドナルドにいました。ってどうしてこうもファーストフード店にばっかりいるのか神経を疑いたくなりますが、その話はとりあえず置いておきます。とにかくマックにいたのです。ぼくは当時まだ煙草を吸っていたので、そこは喫煙席でした。隣の席は空席で、隣の隣の席には女の子がいます。彼女は一人で煙草を吸っていました。ぼくはなにか本を読んでいた。すると二人の白人がやって来て、空いていた隣の席に座りました。それから煙草を吸っている女の子に突然英語で話しかけました。どうやらその白人たちは「煙草を吸うな」といっているようなのです。女の子は英語がよくわからなかったようですが、そのうちなんとなく理解して、「だってここは喫煙席で、禁煙席はあっちですよ」というような顔をして、それを身振りで示そうとしました。いささか困惑気味にです。そう、確かにそこは喫煙席でした。そして店内には禁煙席もちゃんと用意されているのです。それなのに頑として外人たちは譲りません。「健康に気をつけているから、近くで煙草を吸わないでくれないかな。悪いんだけど」というようなことを真顔で繰り返すばかりです。「すごく健康に悪いんだよ。その副流煙ってやつ」。いったいなんなのでしょうか。お前が禁煙席に座れよ。ぼくはそう怒鳴りたかった。でもしませんでした。英語がわからないから。ではありません。もともとぼくがそういうことをいえるタイプなら、こんなことを何年もたってからねちねち書いたりしないことは一目瞭然ですね? もしかしたら、その白人たちはまったく違うことをいってたのかもしれない。彼らの話したことはぼくの想像にすぎません。女の子は「なんなのこの人たち」というような顔で、あきらめて店を出て行きました。ぼくだってたぶんそうするはずです。さて。ぼくはよっぽどその人たちの前で煙草を吹かしてやろうかと思ったのですが、その人たちはものの数分で店を出て行っちゃいました。結局なにも注文せずに。なんやねん。帰るんかい。と思わず関西芸人風につっこみを入れたくなるほどでした。おしまい。というような出来事。この二つの出来事はどこが似ているのか。いいえ。出来事は似ていません。ぼくがそこから受けとったものの質が似ているのです。えーと。どこが似ているんでしょうね。たぶん、排除の論理。とかいうようなことだと思います。テーブルにダンゴムシが来てしまったので、席を譲ることにしてぼくは帰ります。

そして焼酎は空になり、空から雨が降りはじめた音がして、モスの帰りに買った「一平ちゃん屋台の焼きそば」を食べました。ジャズを聴きながらです。ウッドベースの音はいつもなにかがはじまりそうな予感に充ち満ちていて、胸が詰まりそうな感じになってしまいます。いや違うかな。お腹から喉のあたりにかけて、なにかがせり上がってくる感じ。それは吐き気とは対極にあるものとも思えるし、もしかしたらまったく同じものなのかもしれないとも思います。官能的なイルカの群れが踊りながら喉元に、音符の連なりとなって駆け上がり、ぼくの声は海原へと泳ぎ出すイルカの通路となって夜明けの空に響き渡ることでしょう。つまり飲み過ぎて気持ち悪いってこと。吐きそう。

2004, 07, 05, Monday

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